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のび太 Summon 3(光) / 700f 人間の召喚 Atk=0 HP=1 後手,伝説 のび太が戦闘に参加した場合、あなたはバトルスペルを使用できない。 -- http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/27456/1135510382/81 参照 映画シリーズ コメント欄 名前 コメント
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のび太のDead Space 制作者:nobina氏 翻訳者:62氏 制作ツール:RPGツクール2003 概要 2003での改造版。 BIO HAZARDシリーズではなく、DEAD SPACEというゲームをモチーフとしている。 しかしDEAD SPACEはバイオハザード4を強く意識して製作された作品であり、この作品もまたバイオハザードの流れを汲む作品である。 本家からの変更点 シナリオ・マップ・敵・システム全て。 シナリオは本家DEAD SPACE2をよく再現しており、再現度は高い。 特技の使用や回復アイテムの使用などを、メニューを開かずに行うことができる。 無理のないバイオをベースにしているだけあり、即死トラップや体力が強制で1になるイベントがあるなど初見殺しの要素が多い。
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のび太は途方に暮れていた。 何故その様になったのかは、一ヶ月前に遡る。 あの頃のび太の町内ではポケットモンスター金銀が流行っていた。 子供達はポケモンに熱中し、それを育て、最終的にはポケモンの強さが一種のステータスになるようにもなった。 ある日一人の大柄な体格のガキ大将がある一言を呟き全ては始まる 「俺たちポケモンの世界に入れたらいいのにな」 少年達はそれに共感し賛同した。普通なら考えられない事だが、幸いこの町内には何でも叶えてくれる猫型ロボットがいる。 そして猫型ロボットのチカラにより町内中の子供達の願いは叶えられた。 それによって町内の子供達の大半がポケモンの世界に入る事になった。 もちろんその中には例外なくのび太少年も参加していた。 最初のポケモンはケーシイ。 悪くないポケモンだったが最初に貰うポケモンとしては悪かった。「テレポート」ばっかりで、逃げる事により先には進むが経験値が入らない 無論ジムバッジなど一つも持っている筈がなかった。 しかし進む速さは驚異的で、今、彼は一番乗りでタンバシティにいた。 のび太「あ~あドラえもん酷いよ。八つのジムバッジ集めないと現実に戻れない(設定上のルール)なんて~ ドラえも~ん(泣)」 今、ポッポもいるが、うまく弱点を突いたとしてもシジマに勝てる筈がない。ハヤトにだって怪しい。 のび太はまた泣き出した すると、 「パサッ」 そこに一冊のノートが落ちてきた。 突如空から降ってきたノート。 いくらのび太がマヌケでもそれに気付かない筈がない。 のび太「なんだ?これ?」 のび太はその黒いノートを開き、パラパラとめくった。すると目次欄には優しい日本語であることが書いていた のび太「なになに……? このノートに名前を書かれた人はしにます。でもしなせる為には、その人のゲーム中の名前(ほんとうの名前を書くひつようはありません)と、顔と手持ちのポケモンをしっていなければいけません。 名前を書かれた人は40秒あとに心ぞうのびょうきでしにます……どっかできいたことあるなぁ…… またスネ夫辺りのイタズラかな?」 そう思ったのび太だったがやはり好奇心が生まれてき、ノートを試したくなった。 のび太は適当に目の前を泳いでいるさっき負けてこづかいを取られた海パン野郎の名前を書くことにした。 のび太「ええと、タツヤ ポケモン・タッツー、シェルダー。 これでいいのかな?」 しかし海パン野郎は何事もなく泳いでいた。 のび太「なあんだ。やっぱりイタズラじゃないか。」 のび太がそう呟いた瞬間だった。 「ウウッ!!」 突如海パン野郎が胸を押さえて苦しみだし、そのまま海に沈んでいった。 のび太は状況を呑み込めず一目散に逃げ出した。 小脇にノートを抱えながら 数日後のび太はポケモンセンターに居た。 のび太「ふうっ。」 のび太は一息つき、ベッドに寝転んだ。手にはノートがある。そのノートには、人とポケモンの名前がびっしりと書いてあった。 初めはのび太はこのノートに恐れを抱いていた。二度と使うまいと思った。 しかし、何度もトレーナーに絡まれ、財産を巻き上げられていくうちに、必要に迫られ、また何度か使ってしまった。 最初は「なんてことを……」と、自己嫌悪を抱いたが、所詮はゲーム中のキャラ、僕はバイオとかでそれ以上のことをしてたじゃないかと、自己の中で正当化された。 そして人の名前を書き続け、ノートはのび太に無くてはならない存在になった。 のび太にはもしかしたら現実に帰れるかもしれないと希望の表情が見え始めた。 しかし、ポケモンセンターに忍び寄る影があることをのび太は知らなかった。 のび太がこれから先の妄想にふけっているとき、後ろで 「派手に殺ってるようだな」と声がした のび太「誰だ!?」 後ろを向いたが誰も居ない。のび太が気のせいか、と思い忘れようとしたとき、目の前に大きな影が広がった。 のび太「うわあぁぁぁぁ」のび太は大きな声で叫んだつもりだったが声が出なかった。 影は変形を始め、あるポケモンの形になった のび太「ゲンガー……?」 ゲンガー「ほう、俺を見たらビビって心臓止まると思ってたが成長したようだな」 のび太「最初から……?」 不可解な目の前のポケモンの言葉にのび太は無意識に呟いた ゲンガー「ああ、お前がこの世界に来たときから見ていたさぁ。 ヘタレでドジでマヌケで、名前はのび太くんだっけか?ノートのお陰で精神的に成長したか?いや、心がすさんだと言った方がいいかな」 ゲンガーは馴れ馴れしく言った。 のび太「と、いうことはこのノートは君の……取り戻しにきたのかい?」のび太は恐る恐る訊いた。 ゲンガー「とぉーんでもない!そいつはバカでノロマでオッチョコチョイのお前へのプレゼントさ。 そいつは遣るよ」 のび太「僕へのプレゼント……」 プレゼントとは言われたものの、のび太は気になった事を聞いてみた。 のび太「ノートの代償は……代償はないの?使ったら寿命が縮むとか……?」 ゲンガー「ぎゃはははは!ゲームで寿命が縮むわけねぇだろwww まあ、代償というか条件だな。それと俺の頼みをひとつ聞いてくれないか?」 のび太「た、頼み?」のび太はゾッとしたが、ゲンガーの頼みは安いものだった。 ゲンガー「俺を手持ちに入れてくれ。」 のび太「な、何で…」 ゲンガー「言ったろ。俺はお人好しなんだ。お前の事が気掛かりなんだ。」 のび太「条件はなんなの……?」 ゲンガー「お前の力量を見せてくれ。うーん。ま、手始めにタンバの格闘親父でも倒してくれや。見事倒せば手持ちとして加えさせて貰う。」 のび太「そんなこと……」 ゲンガー「安心しろ。お前にはノートが有るだろ。うまくやってくれよキシシシ」 のび太はどうしたものかと考えたがケーシイとポッポだけのパーティーにゲンガーが入ってくれれば心強い。 のび太は何とかしてみようという気持ちになってきた。 そして のび太「わかった。やろう」 ゲンガーはしめしめといったかおつきでニヤけていた。 夜遅くシジマのジムに丸眼鏡の冴えない少年が来た。 少年は最初「このジムであなたが使うポケモンは何匹ですか?」 と聞いてきた。 わりと普通の質問だったし、ジムリーダーが使うポケモンの数はジム毎で決まっていたので 「2体だ」 と、正直に答えた。 その後ジム戦が始まり、少年はポッポを繰り出してきた。自分はオコリザルを出し、彼のポッポを二秒で瀕死にさせた。明らかにレベルの差は歴然だった。直後彼は投了し、ジムを去った。 しかしその後の少年の行動が奇妙だった。 彼を叩きのめしたあとまた、すぐにジムに挑戦してきたのだ。 当然また、ポッポを瞬殺し、彼はまた、投了を告げた。 彼はまた幾度も幾度も来た。 強さも全く変わったとは思えなかった。 再戦を申し込むトレーナーは数多くいたがこの様な、トレーナーは始めてだ。 今度負けたら一緒に24時間特訓に付き合わせ懲らしめようと思ったとき、彼がまたやってきた。 いつもの様にオコリザルでポッポを叩き潰そうとしたとき、物凄い風が吹いてきた。ポッポの「ふきとばし」らしい 自分のポケモンは強制的に替えられ、ニョロボンがでた。 すると少年はニヤリと不気味に笑い、ノートに何かを書き始めた。 「何してるんだ?」 と私は訊いた。 すると丸眼鏡の少年は何かを書き終わったあと 「残念ですね。 僕の勝ちだ。」 と言った すると私は急に胸に圧迫感を覚え、苦しくなり、その場に倒れた。体も動かない。真夜中だから弟子も誰も居ないだろう 薄れゆく意識の中で、「なかなか、ポッポにせんせいのツメを持たせて、先手を取るのは苦労したよ。あっ、これがバッジだな。やったーゲットー。」と少年が言っていたが、私はよく聞き取れずそのまま意識を失い、二度と覚める事はなかった。 後日、のび太とゲンガーは人の目に付かない岩場で話していた のび太「シジマ、無理な特訓中に突然死だってね。ノートによる殺人だとバレないでよかったよ。」のび太は安心した様子で言った。 のび太「それに頼もしい仲間も手に入ったしね。」と言い、チラリとゲンガーを見た。 のび太はゲンガーのお陰で連戦連勝、ケーシイやポッポを出し戻しする事でそいつらのレベルも上がった。 今、のび太は全て順調なのである。 ゲンガー「のび太、ちょっといいか?」 のび太「なに?」 ゲンガー「俺とノートのことだがな、実はゲーム中に起こったバグだ。」そのくらいのび太でも薄々感付いていた。ゲーム中に登場人物が死ぬなんて普通有り得ない。 のび太「まあ、なんとなくわかってたけどね。」 ゲンガー「話は最後まで聞け。俺はバグポケモン。だから、普通のポケモンとは少し違う。何が違うかというと、俺は通常の戦闘では全く経験値は得られない。」 のび太「じゃあどうやって君を育てるのさ?」 ゲンガー「ノートさ。ノートに名前を書き込むんだよ。すると書かれた奴の持っているポケモンの経験値が全て俺に入る。即ち……」 のび太「ノートに名前を書けば書くほど強くなる……」 ゲンガー「そういうことだキシシシ」 のび太がゲンガーの言葉に息を詰まらせているとき、のび太のポケギアが鳴った。ドラえもんからだった ドラえもん「のび太君、皆と話たい事があるんだ。タンバのポケモンセンターに来てくれる?」 のび太「良かった。ちょうど近いんだ。いますぐいくよ。」 ちょっとそこで会話に間があった。のび太がもうタンバまで行っていることに驚いているらしい。 ドラえもん「なるべく早くね!!!」そこで電話が着れた。 のび太「何かなあ?話って。」 のび太は首を傾げた。 ゲンガー「さあな。」 のび太「とにかく行ってみよう。」 のび太はポケモンセンターに向かった。 自分がどれだけ浅はかな事をしたのか気付かずに…… 20分後、のび太はタンバのポケモンセンターにやってきた。 そこにはやす夫、はる夫、出木杉を除く全員が来ていた。 ドラえもん「あっ、のび太君やっときたみたいだね。君が最後かな?」 スネ夫「のび太が此処までこれるなんて以外だね」と、スネ夫が皮肉を言ったがのび太は無視した。 のび太「やす夫君とはる夫君と出木杉は?」のび太は訊いた。 ドラえもん「彼らは先にチョウジの方に行ったからね」 のび太「なるほど」 ジャイアン「っていうかさー、なんで俺たちをこんなとこに呼び出したんだよ!」とジャイアンはかなりイライラした口調で言った ドラえもん「それなんだけどね……」 ドラえもんは暗い様子で言った ドラえもん「問題は二つあるんだ。一つ目は、ここ、タンバのジムリーダー、シジマが死んだんだ。」 のび太はドキリとしたが顔に表情は表れなかった。 のび太「それがどうかしたのかい?」 ドラえもん「そこが問題なんだ。何故かというとシジマが死んでしまってるから、ジム戦ができない。皆ここに来たばっかりだから当然誰もジム戦はしていない。だからもう誰もバッジを八個集めるというクリア条件を満たす事が出来なくなったんだ。」 スネ夫「と、いうことは………」 しずか「もう現実世界に戻れない……!」 しずかの一言にそこにいた全員が口をつぐんだ。しかし ドラえもん「そんな訳じゃない。シジマは心臓麻痺で死んでたけど、誰かと戦った跡がある。それに遺体からはバッジが抜きとられていた。 要するに誰かがバトルじゃ勝てないから何らかの方法でシジマを殺して、バッジを奪った。そのバッジを持っている誰かがいる可能性があるってこと。そんな登場人物が勝手に死ぬなんて設定は無いしね」 スネ夫「ということは現実世界には帰れるんだね?」 ドラえもん「バッジが見つかればね。もし、このなかでショックバッジを持っている人がいたら言ってほしい。即座に電源を切りゲームを中止するよ。一人でも外へ出て電源を切れば皆無傷で現実世界に帰れるから。」 大変な事になった。そうのび太は思い、正直にショックバッジを渡そうとした。 何かを喋ろうと口を開こうとした瞬間、 のび太「?」 のび太の口と手は麻痺したかのように動かなくなった。 のび太はさらに力を入れてみた。全く動かない。まるで「かなしばり」にあったように。 するとのび太の後ろにいたゲンガーが(ゲンガーの条件にモンスターボールに入れないというのがあった)話しかけてきた ゲンガー「話は最後まで聞こうぜ。まだ、第二の話が残ってるだろ。キシシシ ちなみに俺との会話、及び意思疎通はノートに触れた事がない限り出来ないから安心しろ」 ドラえもん「いないようだね。それじゃ仕方ない。第二の話に入るよ。」 しずか「第二の話?」 ドラえもん「この話はもっと落ち着いて聞いてほしい。先月の話なんだけどね。タイム・パトロールが四次元空間で重罪人を追っていたんだ。その途中男はタイムマシンから飛び降り次元の狭間に飛込んだんだ。 そしてその男が飛込んだ時代が……」 スネ夫「現在……だね?」 ドラえもん「そう。この時代だと異次元空間を作ってるのは僕らくらい。そいつが紛れ込んでいる可能性は十分にある。 この世界では死んでしまったり怪我してしまっても機械を壊すスイッチを切るなどすれば問題なかったがもし犯人が脱出条件を知って、脱出出来たやつがそいつ一人になると話は別。 奴は僕らの口を塞ぐため、スイッチを入れたままにするだろうから、僕らは二度と元の世界に帰れなくなる!」 のび太は話を聞き話はよく分からなかったが自分の言動を阻止しているゲンガーは何かドラえもんが言った事に関連してるかも知れないと感じた。 のび太「ドラえも~ん(泣)助けて~」 しかしそれは声にはならなかった。 ドラえもん「シジマを殺したのがこの中の誰でもないとすると僕の考えでは間違いなく時間犯罪者だと思う。」これをのび太が聞いた瞬間、ゲンガーが言った ゲンガー「のび太よ。いいことを教えてやろうか」 のび太「?」 ゲンガー「俺がその時間犯罪者だ。何故そんな体になったかは分からんがな。」 のび太「?」のび太の体に恐怖が走った。 ゲンガー「この体になったのは便利だったよ。さいみんじゅつとかあるしなー。キシシシ」 のび太「あっあっあ」 ゲンガー「ビビるな。俺もお前を殺しはしない。ちょっと体を借りるだけだ」 のび太「からっからっからっ」 ゲンガーの目が光った。それからのび太の意識はブッ飛んだ。 ドラえもん「だから、時間犯罪者がバッジを全部集める前にそれを阻止しなきゃならない」 ジャイアン「全面戦争か……燃えるな」 スネ夫「僕もう帰りたいよ……ママ」 しずか「これからどうしましょう」 すると、さっきまで黙りこくっていたのび太が口を開いた。 のび太「とにかく時間犯罪者と戦うためには、今の戦力を確認しておいた方がいいよ。」 ドラえもん「なるほど。じゃあみんなポケモンを出そうか」 のび太「僕が紙にメモしてあげるよ」 のび太はノートを破りペンを出した。 他の皆はもっていたポケモンを繰り出した 「キシシシ。こいつら馬鹿だ」 のび太、もといゲンガーに操られたのび太(次からのび太と表記します)はそう思った。 のび太「ええとしずかちゃんはベイリーフ、マンタイン……… ジャイアンはオーダイル、ストライク、ゴーリキー、………… スネオはマグマラシ、スリーパー、オオタチ…… ドラエモン、ヌオー、モココ、エイパム……これでいいかな?」 のび太はノートにポケモン、名前を全て書き込んだ。 ばかめ。青狸。これでテメーらは一瞬で全滅だ。 あとはデキスギとかいうやつがバッジを集めたら、待ち伏せて殺して奪ってやる。 そして脱出。まだタイム・パトロールなど出来てない時代だ。奴らも大っぴらに動けんだろう……。 それよりドラエモン……もう少し楽しませてもらいたかったぜ。キシシシ…… のび太が名前書いてから36…… 37…… 38…… 39…… 40 「バタッ」 人の倒れる音がした。 倒れたのはしずかだった。 「うぐぐぐぐぐ」 倒れたしずかは胸を押さえて苦しがっている。 ドラえもん「しずかちゃん!!!!」 ドラえもんは即座に「お医者さんカバン」を出したが、もう手遅れだった。 キシシシ。次はテメーらだ。のび太は心の中でそう笑った。 38……… 39……… 40……… ………………!? おかしい。誰も死なないのだ。何故この様になったのかのび太は思考をフル回転させた のび太『まさか……偽名……!!』 有り得ない事ではなかった。 何故ならこれはゲームの世界だ。主人公の名をマンガの名前や自分の名前のアナグラムなどをしてても不思議ではない。 特に「ジャイアン」など本名であろう筈がない。大方残り二人は名字や名前の略でも使ってるのであろう のび太『しまった……』のび太はそう思った。 とにかく他の奴が死ななかった今、早く次の手をうたねばならない。 そのためには今、完全に「のび太」として振る舞わなければならなかった のび太「しずかちゃん!!なんでしずかちゃんが!しずかちゃ~~ん!!!!!」我ながら完璧な演技であった。 ドラえもん「のび太君!!多分時間犯罪者の攻撃だ!早く逃げるぞ」 のび太「うっうっうっうっ」 ジャイアン「なにやってんだ!のび太!!早く逃げるぞ!」そう言いジャイアンはのび太をおぶりポケモンセンター内部に逃げ出した。 ここでもスネ夫は失禁し、この後ほっとかれ干からびかけた、しずかのマンタインがそれのお陰で九死に一生を得るのだが、主人が死んだ今、それはもうどうでもいいことであった。 ドラえもん達はしずかの死亡現場から離れ、タンバのポケモンセンターの一室にいた。 ジャイアン「チクショウ! なんでしずかちゃんを……」 のび太「うっうっうっうっ」 ドラえもん「皆!落ち着いて……。」と、ドラえもんが場をなだめようとした。しかし、目の前で人がしかも身近な人が死んだショックでスネ夫はもはや発狂寸前だった。 スネ夫「いっいやだみんなしぬいやだああっあっあっ そうだこれは夢だ。夢の中の自分だ。こいつをころしてげんじつのぼくをとりもどそう。」 不意にスネ夫は果物ナイフをとり、自分の手首をかききろうとした。 その瞬間だった。ジャイアンの鉄拳がスネ夫の顔面に炸裂した。 ジャイアン「なにやってんだ!スネ夫!! ドラえもんの話を聞いてなかったのか!? 今、ここで俺達が死んだら、しずかちゃんも死んだままだぞ!!」 殴られた後、スネ夫は我に帰り、はっ、とした様子でジャイアンを見た。 そして スネ夫「ごめん……」と、一言だけ言った。 ジャイアン「のび太もいつまでもめそめそしてんな!!」ジャイアンが激を飛ばした のび太「うん……」 のび太は力なく返事した。 その言葉には別の邪悪な感情が宿っていたようだが。 ドラえもん「皆落ち着いたようだね。 今からこれからの事を言っていくから。」 全員がうなづいた。 ドラえもん「まず、しずかちゃん死因だけど、お医者さんカバンで調べた結果、原因不明の心臓麻痺だった。 周りから攻撃の気配は全くなかったし、ポケモンの技で考えられるのはゴーストの「のろい」が有るけど、それは、体力を削るだけで、あんな急速に生命に危険を犯す程ものではないはず。 石ころ帽子で近付いていって攻撃したり、毒を注射したなら、お医者さんカバンで死因が出るしね。 この事からしずかちゃんやシジマを殺した犯人は、ある能力を得ている可能性がある。」 スネ夫「それはいったい……?」スネ夫が訊いた。 ドラえもん「わからない……ただその、それは、ある条件下の人間を殺すことの出来る力だと思う。」 ジャイアン「なんでそんなことが分かるんだ?」 ジャイアンは首を傾げた ドラえもん「あの時僕らはスキだらけで全滅させようとしたらいつでも出来たと思う。 だが何故奴はそれをしなかったか? 僕らは生きてても奴にとってなんのメリットもない。だから、奴は当然僕らを皆殺しにしようとする。しかし奴の計画に反してしずかちゃんしか死ななかった。 何故なら僕らの中でその殺しの条件をを満たす人物がしずかちゃんしかいなかったから。」 スネ夫「むちゃくちゃだ!!! それに、僕らが生きてるのだって、ジムバッジを集めさせるためかも知れないじゃないか!」 ジャイアン「話しは最後まで聞け」 ドラえもん「いや、可能性の一つとしてだよ。いや、そうでなければ説明出来ない。 もし、僕らにジムバッジを集めさせてから一網打尽にするなら、あそこでしずかちゃんを殺す必要が無い。 人数が少なくなって、僕らがバッジを集められる可能性が減るし、殺しの能力を見せてしまうと何かと有利な事も減るからね。」 スネ夫「なるほど……」スネ夫は納得した。 ジャイアン「俺はよく分からなかった……」 ジャイアンは混乱している。 ドラえもん「要するに、時間犯罪者は、僕達を殺さないんじゃなくて、殺せないんだということ! それなら僕らにもまだ、勝ち目がある!!!」 ドラえもんの目が光った。 ジャイアン「やろう!! 俺達で時間犯罪者をギッタン、ギッタンにしてやろうぜ!!!」 スネ夫「うん!!!」 ドラえもん「皆!頑張ろう!!のび太君は?」 のび太「え、あ、うん。」『クッッッ!』 全員は手を合わせた ジャイアン「しずかちゃんの仇をとろうぜ!!」 オー、と、皆声を合わせた。 スネ夫「ところでなんでドラえもんは今日はそんなに冴えてるんだい?」 ドラえもん「えっ?」 ドラえもんの手にはグレートアップ液が握られていた。 ドラえもん「とにかく、出木杉君たちに報告しなきゃ」 と言い、ドラえもんはポケギアを取り出し、出木杉に電話をかけた。 ドラえもん「もしもし………」 出木杉「ああ、ドラえもん君かい? 話ってなんだい?やす夫君もはる夫君も気になってるよ」 ジャイアン「皆一緒か。丁度いい。」ドラえもんは、今までの出来事を全て出木杉に話した。 出木杉・やす夫・はる夫「嘘だろ……しずかちゃんが……」 三人は信じられないといった様子で絶句した。 出木杉「でも僕らが先にジムバッジを集めたらしずかちゃんは生き返るんだね」 ドラえもん「厳密には違うけど、まあそういうことだね。」 出木杉「でも、いいの? 今までの話を総合すると、まだタンバに時間犯罪者がいる可能性が高いよ。」 ドラえもん「いても何も出来ないさ。だってもう特殊能力では僕らを殺せないし、四対一じゃ分が悪いだろうからね。」 と、ドラえもんは言った後、また一息おいてこう言った ドラえもん「出木杉君。僕らはこれからどうすればいいと思うかい?」 出木杉はしばらく考えた後、口を開いた。 出木杉「とりあえず今は、犯人を探す事が一番だと思う。」 ドラえもん「君もそう思うかい。」 しかしそこでスネ夫が口を挟んだ スネ夫「でもさ、もし、これから奴が僕らに尻尾を掴ませないために僕らを無視してバッジを集め始めたらどうするのさ!! なんの手掛りも得られぬまま、奴だけ現実に帰っちゃうよ!」すると出木杉も考え込むように言った。 出木杉「う~ん。実は僕もそう考えてたんだけど……。」 スネ夫「だろ!僕にいい考えがあるんだ! 今から君達がチョウジのジム前で待ち伏せしておく。 時間犯罪者はいつかはバッジを集めなきゃならないから、チョウジのジムにくる。 そいつを捕まえればいい!!」 と、スネ夫は熱く提案した。 出木杉「それは無理だ……… だってもうチョウジのバッジは手に入れてしまったからね。 それにただ待ち伏せるだけじゃ、何も状況は変わらないと思うんだ。向こうからしたら動かなければ良いだけの話だからね。」 スネ夫「じゃあどうするつもりなんだ!!!」 出木杉「僕に一つ考えがあるんだ。 奴はシジマを殺すことで、結果的にバッジを独占し、有利な位置にたっている。 ならば、僕らをバッジを独占すればいいんだ!」 その出木杉の一言に皆が驚かされた。 ジャイアン「まさかお前もジムリーダーを殺すのか………」 ジャイアンがおそるおそる訊いた 出木杉「いや。そんな事をするはずないじゃないか。」 出木杉は即座に否定した。そしてまた喋り始めた 出木杉「今までので思ったけどさ。 この世界では一つしか得られないものと皆に配られる物とがあるよね。 今までの冒険で気付いたけど後者のものはジムバッジ、秘伝マシンしか無いことに気付いたんだ。 その他のアイテムは人が何人いようと一個だった。ゼニガメじょうろがいい例だね。」 ジャイアン「だからそれがどうしたんだよ!」 出木杉「落ち着いて考えて見てくれ。イブキからバッジを貰うためには何が必要だったかな?」 スネ夫「あっ!」 出木杉「そう!それは「りゅうのきば」。 以前金銀をプレイした人なら分かるよね。」 可能性は高かった。 今まで、ストーリー進行に必要な物であろうとなかろうと、ジムバッジ、秘伝マシン以外は一個だけであった。 ずぼらなドラえもんの設定ミスがこんなところで役に立とうとは。 ドラえもん「なるほど……… これなら時間犯罪者もいつかは僕らと接触を取らざるを得ないな。さすが出木杉君!!」ドラえもんは感心した。 のび太『ふん。 ジムバッジの独占など既に想定の範囲内。 寧ろ好都合だがな。』 と、のび太は心の中で言った。 確かにのび太にとって、ドラえもんたちにがバッジを集めるのは好都合だった。 スキを見て殺して奪えばいい。 しかし、問題はのび太には今、それを行う程の力がない事だった。 奴らの名前が分からない以上、ポケモンバトルで奴らのポケモンを全滅させて無理矢理奪うしか手は無いが、手持ちは、ポッポと、ケーシィ。 勝てる筈がない。 それなら自分が闘うしかないが、リスクがでかすぎる。 ならば、今からポケモンを、捕まえ手持ちを鍛え直すしかない。 この辺のトレーナーも粗方殺してしまったので、自分はもう経験値を得られる手段を失っている。 すると次の手は一つしかなかった。 のび太「ねぇ。ドラエモン。もうこの町から出ない?」 ドラえもんはのび太の突然の発言に驚いたがすぐに 「どうしてだい?」 と、訊いた こののび太という少年は全くと言っていい程頭がよくなかった。 あまり、下手な発言をすると、怪しまれる恐れがあった。 なんとか会話を出ていく話に操作するしかない。 のび太がまた、口を開こうとした瞬間、スネ夫が先に口を開いた。 スネ夫「確かに僕らはこの町から早く出た方がいいと思うよ」 のび太は予想外の発言に驚いたが、このままスネ夫に任せることにした。 スネ夫「だってさ、やつに先を越されてもしアサギのジムバッジを取られたら大変じゃない? また、面倒な事になるよ」 ドラえもん「どういう事だい?」 スネ夫「例えばね、 秘伝の薬も多分、独占可能だろうから、僕らが先にイベントクリアしてアサギのジムバッジも独占できれば、かなり有利になれるんじゃない?」 ドラえもん「成程ね。でも確かに秘伝の薬は独占可能だろうけど、ジムバッジは独占出来ないよ。 それはジムリーダーをジムに移動させるだけだから。まあ、例を挙げるなら、「誰かがウソッキーを退かせたら、皆あの道を通れるようになった」ということみたいなものさ イベントクリア後なら誰でもすぐに挑戦できるんだ。 しかし、時間犯罪者に先を越されたら、またジムリーダーを殺される危険性があるな。」ドラえもんは、すこし黙って考えた。 ドラえもん「よし、皆、今からアサギに行こう」 ジャイアン「そうくるのを待ってたぜ! こんな港町にも飽きたしな!」 ジャイアンもこの町を出たくてうずうずしてたらしい。 のび太『キシシシシ。 うまくいったぜwww』 物事は面白いように、のび太の思う様に進んだ。 その後皆はポケモンセンターから出て、秘伝の薬を貰いに行った。 スネ夫は行く途中でまた、時間犯罪者の攻撃があるのでは、とビビっていたが、 のび太『キシシシシ。俺が此処に居るのに出来る筈ねぇじゃんwww』 まあ、そんな事もあったが今回は、皆で無事に薬を貰う事が出来た。 そして、一行は時間犯罪者に会わぬようすぐさま、タンバを離れた。 しかし、その時間犯罪者がその一行の中に居ることは一人を除けば、誰も知らないことだった。 次へ
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前へ 絶望の再会 のび太は自分が作ったポケモンの世界の欠陥を思い知らされた。 この世界の支配者は自分じゃない『レッド』なのだと―― 降りしきる雨の中、のび太はフラフラとそんなことを考えながら歩いた。 空地を出て、レッドが住んでいる王宮の方角を目指した。 会いたい、会ってレッドの存在を確かめたい。そんな気持ちが募る。 腹立たしい、自分を差し置いて王気どりなのが許せなかった。 (この世界を作ったのはレッドじゃない、この僕だ) その気持ちだけが心を支配した。 しかし、雨は止むことはなく、のび太に容赦なく降りかかる。 それはのび太がこの世界の支配者じゃないことを暗示しているかのようだった。 寒い、傘もささずに夜道を歩いていれば当然だ。 何か、雨を凌ぐものがあれば…… のび太はどこかにコンビニでもないかと探したが、見つからなかった。 今の世の中、コンビニはどこにでもあるはずだったが、この世界にはコンビニ一つもない。 このままでは風邪を引いてしまう。せめて厚着を着てくれば良かった。 のび太が絶望に浸っていると誰かが傘を自分に差し出してくるではないか。 (ラッキー!) のび太に傘を差し伸べてくれた人物は、 170センチ前後ののび太と同じくらいの背丈の長身の女性で、のび太は見覚えがあった。 幼き頃からの友人、源静香だ。 「のび太さんね。傘もささないで歩いてびしょぬれじゃないの!」 のび太は開口一番から怒られた。 でも嬉しかった。やっと見知った人と巡り合えたのだ。 「静香ちゃん、久しぶりだね。僕が作ったこの世界はどうだい?」 のび太は調子良く、静香に問いかけた。 「………のび太さん、最低!」 静香は顔を下に向き、一瞬悲しげな仕草をした後、のび太の頬をひっぱたいた。 のび太は不意をつかれてよろめいた。 「のび太さんのせいよ! のび太さんが作った世界はめちゃくちゃよ! この世界に来て一年経つけど、レッドとかいう独裁者が国民を苦しめているだけじゃない! 罪もない善良な多くの人たちがちょっとでもレッドを批判したりしたら、 捕らえられて王宮の地下深くにあるという牢獄に閉じ込められるのよ!」 静香は泣きながら怒気を含んだ声で言った。 その顔は悲痛で様々な苦しみを経験してこなければ出来ないような顔だった。 「この世界に来て一年だって? 今日作ったばかりの世界だよ。僕は今日この世界を創造してやってきたのさ!」 確かに静香とのび太の言っていることには食い違うことがあった。 のび太は今日この世界にやってきたのだ。また、静香も同様のはず…… (どういうことだ? 何らかの拍子で時間軸がずれたのか?)のび太は疑問に思った。静香は一年前にこの世界に来たと確かに言っているのだ。 「確かに、のび太さんを見かけたのは今日が初めてだわ! のび太さんだけ、この世界に来たのはおかしいわね。 でも、のび太さんがこの世界を作って皆を苦しめたのは確かなの! 早く元の世界に戻しなさい!」 静香は既に頭に血が上っている様子だ。怒りに我を忘れそうにさえなっている。 そんな静香を見たのは初めてだった。 「うるさいなっ!」 のび太は逆切れして静香を殴り飛ばした。 はっとしたときには静香の体は地面に横たわっていた。 のび太は後悔した。怒ったとはいえ、まさか自分が手を挙げるとは予想出来なかった。 (しまった……僕はなんということを……) 後悔しても遅い。静香は悲しんでのび太を見上げている。 まさか自分の心がこんなにもすさんでいたとは思いもよらなかった。 「昔ののび太さんとは違う。どうしてなの!? どうして!」 静香は酷く失望した目をしていた。 「ごめんよ……悪気はなかったんだ。ついカッとなって口より手が出てしまった。 今は反省している。けがはしていないかい?」 のび太は反省の色を見せ、静香に近寄ったが、その手を静香が払いのけた。 「近寄らないで! もう知らない!」 そう言って静香は痛みをこらえた様子で立ち上がった。 そして豪雨の中駈け出して行ってしまった。 その瞬間――突然凄まじい落雷が落ちた。静香の方だ。静香の悲鳴が聞こえる。 民家が建ち並ぶ歩道の数軒先からのものだった。 のび太は傘を手に急いで数軒先の民家の近くへと走り出した。 息を切らしながら静香にたどり着くと、 ガクガクと震えている静香を漆黒のジャンパーにフードを被り、 ゴーグルを身につけた男が、静電気を全身にまとったポケモンを従えて見下ろしていた。 「静香ちゃん、この男は?」 問いかけても静香は返事をしてくれなかった。 のび太に対しての嫌悪感とはまた別な理由からのようだ。 それ程この異形の男が恐ろしいらしい。 謎の男が従えているポケモンはトゲが全身を覆っているサンダースだった。 「源静香……トレーナーランキング56位、ゴミめ。 お前のことは知っているぞ王国の反乱分子だ。 レッド様に忠誠を誓わない者は女だろうと容赦はせん」 謎の男はそう言い放つと静香の胸倉を掴んだ。 静香は苦しみもがくが女の力では振りほどくことができない。 「待て! お前は何者だ! どうして静香ちゃんを狙う!」 のび太は鼻息を荒くして謎の男に突っかかった。 「ずいぶん威勢がいいな、だが、調べてみると野比のび太、 トレーナーランキング127位。やはりゴミだな。 俺の相手ではない。俺は王国警備隊員のデンジだ」 「王国警備隊員? 何だそれは」 「王国警備隊とは、王国中のトレーナーの中から選りすぐりのエリート5人で構成された。 王国の秩序を守る部隊だ」 デンジは雨の中、フードと相手の強さが分かるゴーグルを外し、端正な容姿を露わにした。 「丁度いい、この女をかばうのであれば貴様も反乱分子だ。 この俺の電気ポケモンの力を思い知るがいい、いけっ、サンダース!」 「静香ちゃんは僕が助ける! いけっ、キノガッサ!」 二匹のポケモンが睨みを利かせる。互いに主人の命令を今か今かと待っている。 しびれを切らして先に攻撃したのはサンダースだった。 「サンダース、目覚めるパワー氷」 目覚めるパワーとは使うポケモンによって技のタイプが違う特殊な技である。 このサンダースが使う目覚めるパワーは氷。キノガッサの弱点だ。 サンダースの全身から凄まじい冷気が襲いかかる。 あっと言う間にキノガッサはダウンした。 あまりのサンダースの強さにのび太は一瞬何が起きたか分からなかった。 「クソっ、戻れ! キノガッサ!」 のび太は舌打ちをしながらキノガッサをボールに戻して、 まだどんなポケモンが入っているかわからないボールを投げた。 中から出てきたのは期待を裏切る水、飛行タイプのギャラドス―― 闘いの最中、降り注いでいた雨はいつのまにかやんでいた。 しかし、電気タイプのポケモン相手にとっては絶望的なギャラドスが出てくると 悲壮感も出てきた。ギャラドスは中国の龍を思い浮かべる姿で見かけは強そうだが、 現に強いのだが、電気タイプ相手には致命的という弱点を持つ。 何しろ弱点が重なっているのだ。 「俺のサンダースの格好の餌食だ。サンダース、10万ボルトを浴びせてやれ」 デンジの声とともに稲光が走り、凄まじい雷撃がギャラドスを無残にも黒こげにした。 これでのび太は瞬く間に二匹のポケモンを失い、デンジのあまりの強さに驚愕せざるを得なかった。 (レベルが違いすぎる。でも、最後まで諦めない) まだのび太は諦めなかった。諦めやすいのび太でもまだ諦めるのは早い。 のび太には最強のドラゴンポケモン――ガブリアスが残されているのだ。 「いけっ! ガブリアス! もうお前しか残されていないんだ! 絶対勝てよ!」 「いくら強力なポケモンを出してきたところで、 俺のサンダースには勝てない。サンダース、目覚めるパワー氷!」 サンダースは全身を震わせて冷気を放出する。 その威力は極めて高く、ガブリアスを凍りつかせる程だった。 「サンダース、とどめだ。目覚めるパワー氷! 絶望と共に散れ、野比のび太」 デンジは容赦なくサンダースに目覚めるパワーを命じた。 サンダースは凍りついたガブリアスにも容赦せずに冷気を浴びせる。 もはやガブリアスは戦闘不能となっていた。 (この僕がストレートで負けた!?) 気がついたら負けていた。デンジのあまりの強さにのび太は絶望すら覚えた。 「口ほどにもなかったな。さてと……」 デンジはサンダースをボールに戻すと、別のボールを掴み、投げた。 黄色の体色をした鳥が大空を飛翔しながら現れた。 「伝説の鳥ポケモン、サンダーだ。 そして俺の切り札でもあるが、今はこの女をレッド様の元へ送るために使う。 だが、のび太……お前は弱すぎる。虫けらに過ぎないお前は哀れだ。見逃してやる」 そう言うとデンジは横で震えている静香を捕まえると強引にサンダーに乗せて 飛び去ろうとする。静香は必死の抵抗を試みるも屈強なデンジに成すすべもない。 のび太はポケモンを使って何とかしないのかと疑問に思ったが、 静香の腰にはモンスターボールが付いていないのに気付くと ――ああ、ポケモンを持っていないんだなと悟った。 きっと、これまでの戦いで奪われたのかもしれない。 「静香ちゃん!」 のび太は叫んだ。 「のび太さん! 助けて!」 静香は涙ながらに訴える。静香の悲痛な叫びがこだました。 静香の叫びは近所中に届いているはずなのだが、誰も助けようとしない。 辺りを見回してみると不思議なことに、 通行人は誰も気にも留めていない様子なのに気づいた。 路上を歩いている会社帰りのサラリーマン風の男達。 彼等は一人の女性が大男に連れ去られようとしているのに見向きもしない。 のび太は静香を助けようと思案するものの、 デンジと静香を乗せたサンダーははるか上空へと消えていった。 のび太はさっきまで激闘を繰り広げた路上で絶望に打ちひしがれていた。 静香ちゃんを勝手にこの世界に巻き込み、デンジに何も出来ずにあっという間に 静香ちゃんを奪い去られてしまった。静香を助けることができない自分にいら立ちを覚える。 デンジが静香を連れ去るのを阻止できなかった。 阻止するどころか足が震えて何も出来なかった。例えようのない恐怖が支配していた。 (元の世界に戻そう。この世界は何か変だ) のび太は元の世界に戻す決心をした。意を決して自宅へと駆け出す。 自宅へと走りながらのび太はデンジの言葉を思い出した。 『お前は虫けらに過ぎない』 とても腹立たしかった。でも何も出来ない、どうすることも。 もしもボックスを使ってこの世界の存在そのものを消してしまえば忘れるだろう。 しかしその言葉が頭から離れられない。デンジの嘲笑った表情が脳裏によぎる。 でも、のび太は駆け出すのをやめなかった。自分はとても臆病な人間だと思った。 「ふん、言いたい奴は言えばいい」 のび太はそう吐き捨てた。自宅までもう少しだ。これで何もかも終わる。 そう思った時であった。路地を曲がった直後、とても懐かしい見知った者が姿を現した。 その人物は非常に整った端正な美しい容姿の青年だった。 背がのび太よりはるかに高く、見上げるだけで精一杯だ。 190センチは確実にあるだろう長身を持て余してこちらを見下ろしていた。 その人物こそ出木杉英才――のび太の青年期における最高の親友だ。 出木杉とは少年時代はそれほど親しい間柄でもなかった。 しかし、中学校に上がると周りの環境は変わった。 静香やスネ夫など受験して私立中学に通う者が多くなり、 小学校時代に遊んでいた友達は激減してしまった。 出木杉も当然、私立に通うのだと思っていたが、なんとのび太と同じ公立の中学になった。 しかも、クラスも同じ。これは信じられないことだった。 だが、これが出木杉と親しくなるきっかけとなったことは間違いない。 今、その出木杉が自分の前に立っていると思うと激しい動悸がした。 のび太は嬉しかった。すぐにでも今までの経緯を話して謝りたい気持ちでいっぱいだ。 「出木杉、久し振りだな」 そう言いながら出木杉の肩をポンと叩いた。 「愚かな奴だ……」 出木杉はのび太の手を払いのけながら呟いた。 冷徹な視線がのび太の胸を突く。出木杉の目は驚くほど冷徹だった。 かつての優しい出木杉の面影はない。のび太はショックを受けた。 「出木杉、どうしたんだ?」 「のび太、お前はこの世界を元の世界に戻そうとするが、無駄だ。既に手は打ってある」 出木杉が話し終えると、のび太の家の方角からまたも懐かしい人物 ――いや、人ではない猫型ロボットのドラえもんが空を飛ぶ道具『タケコプター』を 頭に装着し、プロペラを回転させながら猛スピードでこちらへと向かってくる。 そして、出木杉の右隣に着地してタケコプターをしまうとのび太へと目を向けた。 「のび太君は相変わらず馬鹿だね。まんまと僕と出木杉君の罠に嵌まるなんて」 ドラえもんが腹を抱えて大笑いしながら言った。 一方、隣の出木杉は眉一つ動かさない。 「どういうことだ、ドラえもん!」 のび太は憤りを隠せなかった。どうして未来へと帰ったはずのドラえもんが 出木杉と一緒にいるのだ? その答えを知りたかった。 「簡単なことだよ。僕は未来へなんか帰っていない。 君と喧嘩したあの日……僕はすぐに出木杉君のロボットになったんだよ」 ドラえもんが高笑いしながら、のび太の問いに答えた。 のび太はその言葉にショックを受けた。 (まさか……そんなことが?) あまりの衝撃に頭の中が真っ白になりそうだ。ドラえもんが出木杉のロボットに? 「その通りだ。ドラえもんは何年も前から俺のロボット。 せいぜい絶望するがいい……愚かなのび太よ」 さらに追い打ちをかけるような出木杉の冷酷な言葉が胸を刺した。 だが、のび太はまだ言い返すだけの気力は残っていた。まだ奥の手があるのだ。 「ふははははははーーっ! それで僕を罠に嵌めたつもりか! 君達はもしもボックスに細工を施して僕に都合の悪い世界を演出させたつもりだろうが、 勘違いしてるぞ! 今から僕が家に戻って元の世界に戻せばそれで終わりだーっ!」 狂ったような叫び声をあげた。そうだ、家に戻って元の世界に戻せば全て終わるのだ。 「………のび太、やはりお前は愚かだ。 たった今もしもボックスはドラえもんが回収したばかりだ。残念だったな」 出木杉の一言にのび太は発狂して叫んだ。 「うああああああああーーっ!」 のび太の絶望が頂点に達し、どん底に落とされたような悲痛な叫びがこだました。 その場に膝をついて拳で雨で濡れたアスファルトを叩いた。両目から涙が流れ落ちる。 「この世界でお前が生き残る道はただ一つ、国王レッドを倒すことだ。 国王レッドにポケモンバトルに勝てばドラえもんは元の世界に戻してくれる。 デンジとのバトルで己の非力さを思い知っただろう。 這い上がれ……のび太」 出木杉はそう言い残すとドラえもんと共にその場を後にした。 レッドの王宮 平凡な街に似つかわしくない威容を示している宮殿。 それはこの国が民主主義ではなく、専制君主による支配を現していた。 この圧倒的存在感を誇る宮殿に仕えているトレーナーはおよそ三百名。 彼らはエリートであり、一般市民の羨望を集めていた。 唯一無二の絶対君主『レッド』の手足のごとく働き、どんな命令も遂行する。 もはや神にも等しい、その絶対君主レッドは背もたれの高い玉座に座り、 片手にワイングラスを持って口に運びながらモニターに映し出された青年の映像を眺めていた。 煌びやかな王冠を被り、華美なマントをはおっている。 「のび太って言ったっけ? この間抜け面に勝てば永遠にこの世界を支配できるんだな?」 レッドは注がれたワインを飲み干しながら、視線を正面に立っている奇妙なロボットに言った。 「約束は守る。お前がのび太君に勝てば、この世界はお前にやる。 でも、お前が負ければこの世界を元に戻す」 ロボットは淡々とした口調で返した。 「ドラえもん、俺がこんな奴に負けると? 冗談はやめてくれ。 俺は地上最強のトレーナー、レッドだ。俺に敵うトレーナーは存在しない」 レッドは自信たっぷりに言い返した。 それもそのはず、レッドは自分が選ばれた存在だと改めて認識する出来事が 一年前に起こったのだ。それは正に彼の人生を大きく左右することだった。 その出来事をレッドは思い返した。一年前――レッドはシロガネ山に居た。 偶然持ち合わせていたラジオで名のあるトレーナーが謎の失踪をするという事件を耳にした時、 レッドの視界が真っ暗になり、意識を失った。 次に目が覚めたときにはなぜかレッドは玉座に座っていたのだ。 レッドは一時混乱状態に陥ったが、頭のいい彼は自分が別の世界に来たことを察知し、 恐らく名のあるトレーナーが失踪したのと深く関連性があるに違いないと考えた。 レッドはこの国では国王として崇められているのを認識すると失踪したトレーナーの行方を捜させ 王宮に集めさせた。それはとても簡単だった。なにしろ服装がこの国の人間と違うからだ。 なんとか失踪したトレーナー全員を王宮の広間に集めさせるとレッドは演説を行った。 『皆さん、我々は見知らぬ世界に迷い込んでしまいました。 しかし、幸運なことにこの世界は我々が居た世界と同様のポケモンの世界です。 この世界で生活することは容易なはず、なぜなら私はこの世界では国王として崇められているのです。 だから心配せず、私にお任せください。皆さんの生活は保証します』 突然、訳のわからない世界に連れてこられ、 平常心を失っているトレーナーの誰もがレッドの言葉に耳を傾けた。 混乱し、パニックに陥っているものが多かったのも幸いして、 元の世界から来たトレーナー全員をいとも簡単に掌握できた。 それからしばらくしてドラえもんと名乗るロボットが訪ねて来た。 ドラえもんはこの世界に自分達を連れてきたのに関与しているという。 『この世界を永遠に支配したいのならば、一年後にやってくるのび太に勝て』 レッドはドラえもんの言葉に承諾し、のび太が現れるのを待った。 そしてドラえもんの言うとおり、のび太はこの世界にやってきた。 レッドはドラえもんが用意したモニターを使ってのび太をどんな人物か見ていたが、 たかがデンジ如きに無様に負けるところを見て拍子抜けしてしまった。 (……のび太は弱い。俺がのび太に負けることは現時点では百パーセントありえない。 だが、潜在能力はかなりのものだ。頂点を極め、多くのトレーナーを見てきた俺には分かる 成長したら相当強いトレーナーになることは明白だ) 心の内でのび太が後々の脅威になることを予感した。 「ドラえもん、のび太は潜在能力だけは計り知れない。 俺はあえて今勝負せず、のび太が成長した時に相手してやる。 それまでこの玉座でひたすら待つ。RPGのラスボスになったような気分だな」 言ってからレッドは腕組みしながら深く目を閉じた。 「………」 ドラえもんは沈黙しながらレッドの言葉に耳を傾けていたが、やがてレッドがそれ以上話さなくなると どんなところでも行くことができる秘密道具『どこでもドア』を四次元ポケットから取り出した。 どこでもドアはピンク色で塗られているだけで、 ドアノブの付いたごく平凡なドアにしか見えない。だが、その性能は素晴らしく、 一度行ったことのある場所ならドアをくぐるだけで瞬時に行くことができるのだ。 ドラえもんはどこでもドアのドアノブをゴムまりのような手でくっ付けて押しあけてからくぐった。 出た場所はとても薄暗く、ひんやりとした牢獄だった。 例えれば刑務所のような場所で鉄格子の中、 多くの囚人たちが手錠をかけられ、身動きできずに固いシーツの上で苦しそうに寝そべっている。 ここはレッド王国の地下にある牢獄だ。 国王レッドに反乱分子として見なされた者達は容赦なく牢獄へと放り込まれる。 そして強制的な労働を強いられ、どんな屈強な者でも音をあげるという。 ドラえもんがこの地下牢に来た理由は二つある。 その一つが労働を強いられた者達を密かに秘密道具で治療するためだ。 それはドラえもんの義務でもあった。なぜなら自分とレッドとの賭けにこの世界の住民は関係ない。 例え仮想世界の住民でも巻き込みたくはなかった。 ドラえもんは手際良く未来の最先端の医療道具で囚人たちを一人一人治療していった。 「すまねえ、いつも助かるぜ」 囚人の誰もがドラえもんに感謝の言葉をかけていた。 それともう一つ、ドラえもんがここに来た本当の目的 ――それはデンジにここに連れてこられた静香に会うためだった。 静香が閉じ込められている檻はさらに奥深くにあった。 屈強な男たちが閉じ込められている牢獄の最後に地下に降りる螺旋状の階段があり、 そこを降りた先に小さな鉄格子が付いた檻が見えた。 静香はドラえもんに目を向けると明らかに敵意むき出しで 「ドラちゃん! いったいどういうことよ! この世界を元に戻して!」 と喚いた。静香の精神状態は極限にまで達していることが窺えた。 ドラえもんは静香を哀れむような目で見つめる。 静香は涙もとっくに乾き切った様子で、身も心もボロボロだった。 「静香ちゃん、ごめん。のび太がレッドに誰にも頼らず一人で勝つまで元の世界には戻せない。 この計画はずっと前から出木杉君と考えていたんだ。 この方法しか駄目だと分かった時から、僕と出木杉君はのび太君に対して厳しく接すると決めた。 例え鬼といわれようとも……僕と出木杉君は目的を達成する」 ドラえもんの目は涙で溢れかえっていた。 「ドラちゃん……」 静香はそれ以上言わなかった。 「本当にごめん……」 それだけ言うとドラえもんは後ろを向き、またどこでもドアを取り出してその場から消えた。 レッドはドラえもんと話を終えた後、自らを補佐する最高幹部達五人を広間に集めた。 最高幹部五人が一度に集結するのは久々のことである。 集まったのは、レッドの代わりに全指揮権を任せている総司令官のクロツグを筆頭に 出木杉、シロナ、リラ、そしてレッド王国警備隊長のワタル。 出木杉意外、いずれも元の世界で名を馳せたそうそうたる顔ぶれだ。 皆、レッドの座っている玉座より一段低い床に深く平伏している。 しかし、出木杉だけは立ったままで冷徹な眼差しをレッドに向けていた。 「出木杉、控えよ! レッド様に無礼だぞ!」 一番に総司令官のクロツグが怒りをあらわにして注意した。 「クロツグ、別に良いではないか。出木杉は厳密にいえば余の配下ではない、 余の協力者が使わした客人なのだ」 レッドはドラえもんと話している時の口調とは違い、威厳たっぷりに言った。 幹部達と接するときは一人称を『俺』から『余』に変え、威厳を示すのだ。 「ははーっ」 クロツグは面白くないといった態度を示しながらも従った。 「皆、立ちあがって良い。いつまでも平伏しているのは窮屈であろう」 レッドが立ち上がるように促すと、幹部全員が立ち上がった。 「余がお前達を呼んだのは他でもない、 余に反目し半年も小競り合いをしてきた『ジャイアン一派』についてだ」 ジャイアン一派とはレッドの独裁体制に不平不満を持つ者達を集めた組織―― いわば反乱分子の寄せ集めといっていい。 規模は三十人程度に過ぎないが、トレーナーランキング5位のリーダー、ジャイアンに 『達人』と呼ばれる9位の骨川スネ吉、それにスネ吉の従兄で11位の骨川スネ夫は侮れない。 その上位三名を除いてもランキング二桁台の強者が多い。1位のレッドには恐れるに足らないが、 幹部達は大いに苦しめられてきた。ランキングが僅差だと戦い方次第では負けてしまうこともあるのだ。 「良く聞くがよい、もうジャイアンとの遊びは終わりにしたい。 新しい遊びを思い付いたのでな。クロツグに命ずる、ジャイアンとそれに与する者は 余に対する反逆とみなし、徹底的に捕らえるのだ」 レッドはクロツグにジャイアン一派との遊びの終わりを告げた。 今までの小競り合いとは違い、徹底的にジャイアン一派を潰す決断を下した。 新しい遊びとはもちろん、のび太のことである。 「ははーっ、ジャイアン一派は必ずや総力を挙げて壊滅して見せます」 クロツグはさっきまでの不機嫌な表情とは打って変わり、満面の笑みを見せて答えた。 それに続いて、他の幹部達も大喜びといった様子だ。 特にクロツグはジャイアン一派のことを面白く思っていなかったのをレッドは知っている。 「お待ちください!」 突然、クロツグの後ろに控えていたワタルが前に進み出た。 「レッド様、ジャイアン一派に制裁を加えるのはこの王国警備隊の精鋭で十分でございます。 ぜひ、私めにお任せください」 「何? 王国警備隊などお前を入れても僅か五人ではないか! そんな少数で何ができる」 すぐにクロツグが反論した。シロナ、リラ、出木杉は沈黙を保っている。 「クロツグ様、少数精鋭と言った言葉をご存じか? 王国警備隊は我々の世界で名の知れたジムリーダー、チャンピオンで構成されています。 この世界の軟弱なトレーナーなど五人で十分でしょう。レッド様、ぜひ私めに」 ワタルの意志の強さについにクロツグは閉口した。 「………良かろう。この件はワタルに全て一任するとしよう」 レッドはしばしの沈黙の後、了解した。 「ありがとうございます。必ずやジャイアン一派を壊滅して見せます」 議論に収拾がつくと幹部達は広間から出て行った。 レッドはワタル一人には手に負えないのではないかと思ったが、 王国警備隊が壊滅したら、また別の者達で結成させればいいと考えた。 非情だが、レッドにとって部下達は使い捨てに過ぎないのだ。 (俺さえ、この王国に君臨出来ていれば他はどうでもいい) レッドはモニターに映された自分に対する現時点ではとても小さな脅威――のび太を見ながら思った。 この小さな脅威もいずれは大きな脅威となるに違いない。 それを恐れつつも、レッドはなぜか楽しみでもあった。自分を脅かすトレーナーの存在を 心のどこかで待ち望んでいたのだ。 (でも最後に勝つのは俺だ。 最強のトレーナーの称号とトレーナーが君臨する世界の支配は俺のものだ。誰にも渡さん) こうしてレッドの支配する王国の夜はふけていった。 次へ
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導かれし運命 カーテンも閉め切った薄暗い部屋の中で、小太りの青年が黙々と携帯ゲーム機で遊んでいた。 部屋の中は薄暗く唯一の光は携帯ゲーム機の明かりのみだった。 ゲームソフトやゲーム機がいくつも散乱している。 「ポケモンは楽しいな。はははっ!」 野比のび太は笑いながら独り言をぶつぶつ呟いた。のび太は25歳だが、 仕事もせず、家に引きこもって遊び呆けていた。いわゆるニートである。 のび太をまともにするためにやってきた猫型ロボットのドラえもんはとうに彼を見放し、 未来の世界に帰ってしまった。しかし、のび太はそれをまったく気にしていなかった。 (自分が悪いんじゃない……全てドラえもんが悪いのだ) のび太はゲームをしている間に突如としてドラえもんが帰った日のことを思い出した。 全てドラえもんに非があるのだ。自分は何一つ悪くない。 再び集中してゲームをしようとしたが、いまいち集中できない。 (ドラえもんのことを思い出したせいだ) のび太は勝手にそう思うことにした。そう思わなければならないような気がした。 すっかり集中力が途切れたのび太は一時ゲームを中断することにした。 のび太が今、熱中しているゲームは全世界で大ヒットしている『ポケットモンスター』だ。 このゲームはポケモンと呼ばれるモンスターを捕まえて育てたり、闘わせることができるゲームだ。 のび太は何年も前からこのゲームの虜となっていた。 のび太が住んでいる街でも幅広い年齢層に支持され続けている。 小さい頃からの友達であるジャイアンやスネ夫、それに静香や出木杉もやっている。 のび太は彼らに長らく会っていない。 聞いた話によるとジャイアンは店を継いでスーパーにまで発展させ、 スネ夫は親の会社を継いで社長となり、静香は大学を出て中小企業に勤めていると聞いた。 出木杉の噂は聞かない。彼等は既に自分とはかけ離れた遠い存在になっていた。 そんな彼らを恨めしく思いつつも再びゲームをしようとしたが、やはり気が乗らなかった。 その時だった。のび太の頭の中に稲妻のような衝撃が走った。 不機嫌なのび太の顔がみるみる内に笑顔になる。 途端にのび太は部屋のカーテンを開け、電気を付けて押し入れの戸を強引に開けた。 押し入れの中は古ぼけていて埃だらけだった。 かつてドラえもんが自分の部屋と称していた押し入れだ。 「何かあるはずだ。ドラえもんが残していった物が」 一心不乱にのび太は押し入れの中を探った。 しばらくして押し入れの隅にドラえもんがいつも身に付けていたポケットが見つかった。 それはのび太を狂喜させるに値するのには十分だった。 「やったぞ! まさか『スペアポケット』を残していくなんて!」 スペアポケットはドラえもんの『四次元ポケット』に繋がっているのでドラえもんの道具を出し放題だ。 のび太はスペアポケットを右手で掴んで歓喜した。 自分の不幸な人生を変えることが出来るかも知れない。 そう思うとのび太の心が弾んだ。早速のび太はポケットに手を突っ込んだ。 中を探っていく……そして大型の電話ボックスのような物が出てきた。 「何だ? これは『もしもボックス』に似ているが、どこか違う」 電話ボックスのような大型の道具を見つめて言った。 もしもボックスはどんな世界も作り出せる素晴らしい道具だ。 しかし、出てきたのはもしもボックスとは微妙に違う…… もしもボックスの新型のような物なのかもしれない。 のび太はそう思うことにした。新型なら、それはそれでラッキーだ。 (これさえあれば僕の望む世界を作れる) のび太は思った。その新しいもしもボックスのドアを開けて、中に入ると その内装のハイテクさにビックリした。 のび太が知っているもしもボックスとはまるで違う。 「間違いない、これは新型もしもボックスだ」 高まる高揚感を胸にのび太は期待に目を輝かせた。 すると突然どこからか音声が聞こえてきた。 「スーパーもしもボックスへようこそ! この新しいもしもボックスは従来のもしもボックスより、 大幅に機能が充実した、もしもボックスの集大成です。そのため、どんな世界も演出できます。 どのような世界にしましょうか?」 その音声はどことなく懐かしさを感じさせるものだったが、のび太はそんなことをあまり気にせず、 話すことが出来るハイテクなもしもボックスに心を奪われていた。 のび太はどんな世界にするか既に頭の中にあった。 「この世界をポケモンの世界にしてくれ! ポケモンのゲームに登場する強いトレーナーも登場してほしい。 さらに付け加えると、この世界のジャイアン、スネ夫、静香、出木杉、ドラえもんも 僕と一緒に連れていって欲しい!」 のび太は興奮を抑えきれずにリクエストした。 なぜ、のび太がこの世界のジャイアン達を自分と一緒に連れて行きたいかというと、 彼等を見返して、自分がいかに凄いかということを見せつけたいからだ。 「かしこまりました」 新型もしもボックスが丁寧に言うと急に目の前が真っ暗になった。何も見えない。 恐怖が募っていくのが分かったが、自分が望んだ世界に行けるのならと思うとそれを抑えられた。 (この暗闇が終われば、僕はポケモン世界の頂点だ) のび太はポケモンを極めつくしていた。 働いていないため誰よりもポケモンに時間を費やせるからだ。 しかも、対戦では一度も負けたことがない。 これから行く世界が自分にとってどれほど有利か、のび太は知っていた。 外界から閉ざされ、真っ暗で光さえ届かぬシロガネ山の最深部に一か所だけ明かりが照らしている。 そこにいるのは赤い帽子がトレードマークの青年レッド。 カントー地方では知らぬ者はいない伝説のトレーナーだ。 身長180㎝はあろうかという長身の痩せ形で25歳という若さで 最強の名を欲しいままにし、100年に一人の逸材だと言われている しかし、レッドは数年前にカントーポケモンリーグチャンピオンを突然辞めて、 ひたすらこのシロガネ山で修業をしていた。 自らを限界まで極めるために……。 長年チャンピオンをしてついに一度も負けることがなかった。 レッドがチャンピオンを引退する決意をしたのは他の地方のチャンピオンとの対戦だった。 ホウエン、シンオウの二人のチャンピオンと勝負したが、圧勝だった。 弱すぎてとてもレッドの相手にはならなかった。 ホウエン、シンオウのチャンピオンを名乗る二人のトレーナーとの勝負で、 レッドは自分と互角に闘えるトレーナーが永久に現れないことを悟った。 「どいつもこいつも雑魚すぎて話しにならねえ…… ダイゴもシロナも俺の足元にも及ばなかったな。 あれでチャンピオンとは笑わせてくれる……」 傍らでレッドのためにフラッシュで明かりを付けているポケモンのピカチュウを見つめながら、 過去を思い出すようにレッドは言った。 未来永劫自分に敵う相手のいないことが内心つまらないなと思いつつも 心の底では嬉しくもあった。それは例え様もない優越感だ。 「……俺は最強だ。俺に敵う奴はいない。もしもこの世界がポケモンの強いやつが偉い世界だったら良かったのにな」 レッドは家から持ってきたラジオを聞きながら愚痴をこぼした。 すると、摩訶不思議なニュースが耳に飛び込んできた。 「速報です。名のあるトレーナーが突然失踪するという事件が起きました。 この現象は世界各地に及んでいます」 レッドは驚いてラジオから流れ出る不可解な現象に聞き耳を立てた。 (名のあるトレーナーが突然いなくなる?) それは理解しがたかった。なぜ名のあるトレーナーが同時に消えてしまうのか疑問だ。 その時だった、ピカチュウのフラッシュの明かりが突然消えた。 途端――視界が真っ暗になり、レッドは意識を失った。 次へ
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前へ 暗い暗い闇の中。 僕はずっとその中を泳いでいた。 いや、正確には僕は泳げないから、漂っていたと言った方が正しいかな。まぁそれはどうでもいいけどね。 ところで、僕はどの位の距離を、何時間、何日、いや何ヵ月泳いでいたのだろう。 それは僕には、全く分からなかった。 見当もつかなかった。 ただ、あの忌まわしい記憶は残っている。 シジマさんや海パン野郎達を躊躇無く殺していった事を。 僕は突然、言いようもない感じ(罪悪感って言うのかな)に襲われ身震いした。 何故あんなことをしたんだろう。 心が痛くなった。 その時だった。 突如目の前の闇を突き破り、一筋の光が差しこんだ。 その光は形を変えてゆく。 それは人の形をしている。僕の大好きな人。 僕はそれが誰か知っていた。 「しっ、しずかちゃん!」 僕は叫びをあげ、しずかちゃん元へ無我夢中に泳ぐ。正確にはもがく。 しかし泳げども距離は縮まらない。僕は自分の水泳の才能を呪ったが、そんな事はどうでもいい事だった。 しずかちゃんは言った。 しずか「………たさん……びたさん……のび太さん。」 のび太「しずかちゃぁぁーーーーん!」 彼女の囁きで、僕はもがきのペースを早めた。 いつのまにか涙が溢れ、顔はぐちゃぐちゃになっていた。 しずかちゃんはそんな僕に、一瞬微笑みを浮かべると僕の方へ(まるでタケコプターでもついてる様に)飛んで来た。 のび太「しずか……ちゃん?」 僕は囈の様に言う。 すると、しずかちゃんはもう一度僕に微笑みを投げ掛け、耳元で一言囁いた。 しずか「のび太さん……。 皆を……皆を……助けてあげて……。」 しずかちゃんはそう言うと僕の元から離れ、上の方へ(闇の中で言うのもなんだけど、まぁ僕の頭がある方が上だろ。常識的に。)飛んでゆく。 のび太「しずかちゃぁぁーーん!」 僕は懸命にしずかちゃんを追いかける。 のび太「しずかちゃん! 皆を……皆を救うってどういう事!? ねぇ!しずかちゃん! 待ってよぉー。ねぇったらぁ!」 僕はかつて無い程の必死さでしずかちゃんを目指す。 涙と鼻水で化粧された顔は、かなり不細工なものになっていたであろう。 しかし僕は泳いだ。 しずかちゃん目指して。 僕の心の一つの輝き、そして光。それを目指して。 僕は光を求め、重いまぶたを開いた。 舞台は戻って自然公園。 のび太「………うーーん……。」 今にも起き上がろうとするのび太にゲンガーは唖然とする。 ゲンガー「な……何故こんなに早く起きれるんだ……。」 ドラえもん「僕は始めから思ってた。 君を捕まえる事は出来ないってことをね。 だから、ボールを囮にして『はっかのみ』をのび太君に投げ与えたんだ かなりリスキーな作戦だけど成功して良かったよ」 ドラえもんの言葉を聞き、ゲンガーはぎょっとする。 ここでわざわざのび太を起こしたということは、次に来る策はただ一つ。 ゲンガー『俺をボールに回収する気だなッ!』 ヤバイ、これはマジでヤバイ。 奴があの眼鏡猿を起こしたのは、自分の『所有者』であるのび太に自分をボールに回収させる為だろう。 ボールの中に入れば如何に自分のレベルが高かろうと無力な存在。 眼鏡猿の所有権は解除してしまったから、もう一度、あのルールを満たさない限り奴を操る事は出来ない。 故にボールに収められたらもう終り。 絶対絶命のピンチだ。 しかし、まだ希望が潰えた訳では無い。 ノートのルールにより、のび太はここに至るまでの過程の記憶が全く無い。 故に、今すぐこの状況を理解する事は到底不可能だろう。 奴の単純な性格は、タンバまでの追跡、数日間を共にした日々で良く分かっている。 自分の話術なら、『かなしばり』が解ける残り数十秒位なら上手く時間を稼げるだろう。 解けたら即、あぼーんさせれば良い。 ゲンガーは簡単に作戦を立てると、まだ寝起きたばっかりののび太の元へと近づいた。 ゲンガー「おい、のび太!ヤベエぜ、お前がタンバで人殺したのがバレてんぞ。皆俺達を許さねえって言ってるぜ。どうするよ?」 とりあえず、今の状況を誤魔化す為に嘘の情報を流さなければ。 安い策だが、寝起きのまだ働いてない脳味噌には効果抜群だろう。 それを見たジャイアンはヤバイと思い、のび太に指示を飛ばす。 ジャイアン「おーい!のび太!騙されんな!早くそいつをボールに戻「アーーーーー、アーーーーー。 なんて言ってるのか聞こえないなぁ。アーーーーー。」 ジャイアン「あの野郎……。 ワザと大声を上げて、俺の声をかき消してやがる……」 ジャイアンは唇を噛む。 単純だが、時間を稼ぐには最良の手だ。 成程、最初にのび太に接近したのもこの為か。 ジャイアン「おーい!のび太!聞こえるだろうよぉーッ!のび太ぁぁ!」 ゲンガー「ワーーーーー、ワーーーーー。キシシシシシ。あのデブゴリラ。無駄なのによぉ。」 尚も声を上げるジャイアンを見てゲンガーはあざ笑う。 ゲンガー『さて、そろそろ『かなしばり』が消えるな。 そしたらまず眼鏡を消し去って……。ん?』 そこまで考えて彼は気づいた。目の前の少年の顔に。 涙でぐしゃぐしゃになり、憎しみを込めてこちらを睨んでいることに。 そして、一番ゲンガーの精神を揺さぶった事は、彼の手にモンスターボールが握られていた事だった。 ゲンガー「テメエッ!何を!」 のび太「何をって……?見たら……見たら分かるだろ…… 時間犯罪者……お前を……封じ込める!」 有り得ない。この状況で奴がこんな行動をとれるのは有り得ない。 第一、ここに至るまでの記憶は無いし、ジャイアンの指示も全て聞こえなくした。なのに何故…… のび太「僕は……夢を見た。 しずかちゃんの夢を。君が……君がしずかちゃんをッ!だから……君は……僕が封じ込めてやる!」 のび太はモンスターボールをゲンガーの方へと傾ける。 ゲンガー「ガキがぁぁーーーー!調子に乗るんじゃねぇーーーーッ!」 ゲンガーの激昂が天に轟いた瞬間、彼の肩がすぅっと軽くなった。 ドラえもん「ヤバイ!『かなしばり』が解けた!」 ドラえもんも叫ぶ。 ゲンガー「食らえッ!シャドーボールッ!」 のび太「戻れ、ゲンガー!」 凄まじい光が辺りに発生する。 その光に驚き、ゲンガーは目を瞑る。 そして彼は光が消えると、再び目を開いた。 目の前に、あのにっくき眼鏡猿は居ない。 ゲンガー「キシシシシシ。 キシシシシシ!」 ゲンガーの笑いが響く。 彼は辺りを見回すが、回りには最早誰もいない。 ゲンガー「みんな……みんな消し飛びやがったぁッ! キシシシシシ!雑魚共めッ!」 ゲンガーは笑った。笑う事しか出来なかった。 何故なら……彼は今檻の中の『無力な存在』だから。 あの瞬間……、始めに光弾を放ったのはゲンガーだった。 しかし、それがのび太にぶつかるかぶつからないかの瞬間、『あなをほる』で回りこんだジャイアンのイノムーが、二人の間に割って入ったのだ。 イノムーが吹っ飛ばされた次の瞬間……ゲンガーは無事ボールに回収されたのである。 舞台は戻る。 時間は止まっていた。 誰もすぐには動かなかった。 本当に終わったのか?そんな考えが皆を包んでいた。 しかし、しばらく時が経ち、ゲンガーが飛び出して来ない事を確信すると、スネ夫はヘナヘナとその場に腰をおいた。 スネ夫「……お……終わった……」 スネ夫に釣られたか、皆緊張の糸が解け、その場にヘタリ込む。 ジャイアン「勝ったのか……? 勝ったのか?俺達は?」 ドラえもん「勝ったよ……僕達は……」 ジャイアン「そうか………」 ジャイアンもすっかり骨無しになっている。 するとヘタリ込む三人の前に、目を赤くした少年がやって来た。 そいつは言った。 のび太「皆……皆……ごめん……本当にごめん…… 今まで何が起こってたか分かんないけど…… タンバの……タンバのシジマさんを殺したのは……僕なんだ……」 ジャイアン「なんだっ(ry」 思わず叫ぼうとしたジャイアンの口をドラえもんが塞ぐ。 そしてドラえもんは言った。 ドラえもん「それは本当かい?」 ドラえもんの問いに、のび太涙を拭き無言で懐から小さい何かを取り出す。 それは紛れも無く、タンバジムバッジ、ショックバッジだった。 のび太は続ける。 のび太「……誰にも……勝てなくて……僕が……泣いてた時……ノートを拾ったんだ…… そして……僕は……」 ドラえもん「それ以上言わなくていい。」 ドラえもんはそう言い、のび太にハンカチを差し出した。 ドラえもん「大丈夫だよ、のび太君。僕らは……君を許すよ」 のび太「ドラえもぉぉぉん!!」 のび太はドラえもんに抱きつき、体を任せた。 溢れる涙を止める事は出来なかった。拭えど拭えど止まらない。 ジャイアン「泣かせやがる………」 スネ夫「うん……」 二人も貰い泣きしていた。 その時、 ?「いやぁ、友情という物は美しい物だねえ」 見知らぬ男がこちらを見て拍手をしていた。 その姿はピッチリとしたスーツに包まれた、さながら戦隊もののヒーローのようだった。 スネ夫「誰だい?君は……?」 男「君に答える義務があるかい?」 スネ夫は素直な疑問を述べたが、男に即打ち消されてしまった。 その言葉にカチンときたのか、ジャイアンが男に詰め寄る。 ジャイアン「オイオイ…… お前が何処の誰だか知らないけどさ、何様のつも……」 ジャイアンの言葉はそこで止まった。 男の拳がジャイアンの体に当て身を食わせたのだ。 のび太「ジャイアン!」 驚きを隠せない一同に、一方男はトランシーバーのような物で誰かと会話する。 男「アー、こちら……。これから容疑者の確保に入る。 作戦開始!」 次の瞬間、 スネ夫「プギー!」 謎の光線に当たり、スネ夫が倒れた。 ドラえもん、のび太「スネ夫ーッ!」 のび太とドラえもんは反射的に光線の出どころを見る。 そこには、男と似たような格好をした女がそこに立っていた。 手には光線銃が握られている。 ドラえもん「一体これは何……」 男「おやすみ。」 男は光線銃を取りだし、その引金を引いた。 その場に二人の人間が倒れた。 男「よし、回収だ。」 男はのび太の元へと歩み寄り、その手から乱暴にモンスターボールを奪い取る。 のび太は薄れゆく意識の中、必死に意識を保ち彼らの話を聞いていた。 男「えー、もしもし? タイムパトロールですか?たった今容疑者を確保しました。 時代と次元は……」 のび太『タイムパトロールだって!?』 のび太は驚く。 女「待って、この子まだ意識があるわ!」 ヤバイ。 のび太の血の気が引く。 男「じゃあ、もう一発撃って早く眠らしちゃいなよ」 ビビビビビビビ。 それはのび太の聞いた最期の言葉になった。 ボールを回収し終えた二人は、迎えのタイムマシーンに乗り元の時代へと引き返していた。ついでにノートも回収してきた。 女が言う。 女「あの子達はどうしたの?」 計器を確認しながら男は言う。 男「別の班が動いてる。 記憶と時間を少々操作して現実世界に返してやるんだってさ。 多分彼らが次に目覚めるのは彼らの寝床だよ。」 女「そう。」 女は一息つく。 男「それにしても、最後にアイツを封じ込めたあのボールは凄かったな。 23世紀の科学顔負けだよ。 『モンスターボール』って言ったっけ? 同じ名前の秘密道具があった気がするけど」 男はゲンガーの入ったモンスターボールを手に取り、呟く。 女「時間犯罪者の記憶の操作は?」 女は再び疑問をぶつける。 男「『ゲームの記憶』だけ消し去ってるよ。 後、暴れないように力を弱くしておいた。 奴も23世紀に戻れば裁かれるんだろうな おっと……」 突如、タイムマシーンの機体が揺れ動く。 女「どうしたの?」 男「時間の乱気流にはいっちまったみたいだ。大丈夫、すぐに……おわっ!」 女「きゃあああああ!」 機体が大きく傾き二人は壁に体を叩きつけられた。 しかし一息つくと、また逆に叩きつけられる。 まるで箱の中に入れられて振り回されているようだった。 女「きゃあああああ!」 男「慌てるな!すぐに収まる!」 数分後、男の言う通り機体の揺れは収った。 二人はホッと一息つく。 女「イタタタタ……。 あんな時の乱気流は久しぶりに体験したわ。」 女は肩を押さえながら呟く。 男「そうだな……。くそっ、俺は膝をうっちまった……。ああああッ!」 男は突如すっとんきょうな声を上げた。 女「どうしたの?」 女の問いに、男は無言で計器を指さした。 女はそれを見て真っ青になる。 なんと計器がメチャクチャに壊れていた。 これでは航行不能だろう。 男「畜生!ここまで……ここまで来たのに……!」 女「嫌よ!私死ぬの嫌よ! ねぇ!どうするのよぉ!」 男「慌てるなッ! あ…………機体が……崩れてゆく……」 女「きゃあああああ!」 二人の健闘も虚しく、二分後船は時間と次元の波へと飲まれていってしまった。 「うーん……、はっ、ここは?」 明るい陽射しを浴び、『彼』は目を覚ました。 ここが何処かは分からないが、何とか自分が生きている事は分かる。 タイムマシーンが途中航行不能に陥った事は覚えている。 それと、自分が23世紀で犯罪を犯し、逃げてきた事も。 とりあえず、彼は意識をはっきりさせようと、顔を洗いに近くの水場へと足を運んだ。 「ん?やけに体が軽いな」 彼は自分の身の軽さに違和感を感じつつも、顔を洗いに水場へ顔を寄せる。 その瞬間、 「なんじゃこりゃあああああああ!!!!」 水面に映った自らの姿を見て、彼は100デシベルに達するか達しないかの声を張り上げた。 「え?え?どうなっちまってるんだ?」 彼は水面を除き込む。 その姿は幽霊や死神の様な類の姿をしていて、お世辞にも人間と呼べる様な物ではなかった。 「何だよコレマジで。こんなんじゃあまともに外も歩け……イテッ。」 すると、失意に沈む彼の上から何やら冊子の様な物が落ちてきた。 「イタタタタ、なんだよコレ……。」 彼は反射的にそれを見て拾いあげた。 黒いノートだ。 彼はこのノートをパラパラと捲り呟く。 「俺……このノート知ってる……。 使い方も……ルールも……。」 『彼』は呟く。『彼』は知らない事だが、どうやら「ゲームの記憶」を消されても「ノートの記憶」は残っていたらしい。 そして、自分は今『宿主』になる人間を探さなければならない事も何となく知っていた。 ?「よーし、ケーシィしか居ないけど頑張るぞー 僕が一番乗りで現実に帰るんだ!」 ヤベッ、誰か来る。 『彼』はノートを掴み、そそくさと物陰に隠れる。 数秒後、『彼』の前を如何にも頭が悪そうな少年が音痴な鼻唄を歌いつつ、通り過ぎていった。 現実?帰る?意味が分からない。 「あのガキは……とりあえず、跡をつけてみよう。 現実に帰るとか気になる事を言ってたし……。 頭悪そうだから……もしかしたら利用出来るかもな!キシシシシシ。」 彼はこっそりとのび太の跡をつける事にした。 彼がタンバでのび太少年にノートを与えるのはまだ未来の話。 そして、彼が今までこのシチュエーションを何度体験してきたかは、最早誰も知らない事であった。 そして彼は知らない。自分は今、無限の時の中で同じ事を無限に繰り返している事を。 そして舞台は現実世界に戻る。 ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。 のび太「うーん。」 今日もけたたましく鳴るアラームの音。 のび太はそれを止めるべく、手を伸ばした。 カチッ。 スイッチを押された目覚まし時計は急におとなしくなる。 のび太「おやすみ……」 のび太は再び夢の中へとGO BACKする。 のび太は気づいていないが、今は8時。小学校ではとっくに遅刻の時間だ。 そして彼はまた気づいていない。目の前の鬼に。 「のぉびぃたぁ……!」 鬼が怒りを浮かべた声を上げるが、のび太は のび太「うーん、行けっ、ケーシィ…… ああ、テレポートばっかしないで戦ってくれよぉ。」 ママ「のび太ぁぁ!!!!」 のび太「うあああああああああ!」 ママの雷が落ち、のび太はトーストをくわえ家から飛び出した。 ドラえもん「やれやれ……のび太君は……」 ドラえもんは小さくため息をついた。 のび太はすすきヶ原町を学校目指し、爆走する。 のび太『最高速度で……この角度を……曲がるッ! のび太、いっきまーす!』 しかし残念ながらアムロ・のび太は角を曲がりきることは出来なかった。 突如、横から来た誰かにぶつかったからである。 「オフッ!」「スップリングッ!」 のび太はその衝撃で吹き飛ばされた。 のび太「イタタタタ……。誰だよ……。 ん?ジャイアン?」 のび太の顔が青ざめる。 ジャイアン「のび太ぁぁ!」 のび太「ひいいいいッ!」 のび太は死を覚悟した。 その時、 出木杉「やぁ、野比君に、タケシ君じゃないか。」 ジャイアン「出木杉ィ。」 ジャイアンは思わずのび太への攻撃を止めた。 ジャイアン「出木杉が遅刻なんて珍しいな。」 出木杉「今日は起きるのが遅くてね。 変な夢も見たし。」 ジャイアン、のび太「変な夢?」 のび太とジャイアンは気になり、訊く。 出木杉「いやぁね、皆でポケモンの世界に行くって夢さ。 余り覚えてないんだけど。」 ジャイアン「なんだぁ、その夢w」 ジャイアンは笑い出す。 出木杉「まぁいいよ、笑ってくれても、所詮夢だし。ああ、それと野比君」 出木杉はのび太の方を向く。 出木杉「僕の後ろからやす夫君とはる夫が来るんだ。どうせ遅刻するんだし、もう少し待ってようよ!」 スネ夫「まさか、優等生の出木杉がそんなことを言うとはね。」 嫌味な言葉と共に現れるスネ夫。 のび太「スネ夫!」 スネ夫は続ける。 スネ夫「ちなみに僕の後ろからはしずかちゃんが来るよ」 ジャイアン「なあんだ、皆遅刻してんじゃねえか。」 ジャイアンの言葉に、今度は皆が笑った。 そして数分後。 ジャイアン「よーし、皆揃ったな。じゃあ、学校目指してしゅっぱーつ。」 総勢七名の遅刻者は学校を目指し歩き始める。 誰もゲームの事を覚えていない。 学校には遅刻しているが、皆はこのふとした日常に幸せを感じていた。 のび太も、そんな日常がいつまでも続けばいいなと思った。 『キシシシシシ。』 のび太「ん?」 のび太は何か聞こえた気がして立ち止まった。 ジャイアン「おーい、のび太、何してんだよ置いてくぞ~」 スネ夫「全くのび太はノロマだな。」 のび太「待って、今行く~」 のび太は走り出した。 のび太『気のせい……かな?』 こうして青い空の下、彼らの日常はまた静かに過ぎてゆくのであった。 ―ポケモンとのび太とノートと完― あとがき 605 名前:ポケモンとのび太とノートと ◆C1aEnJaUS2 [sage] 投稿日:2007/06/01(金) 22 12 05 ID ??? これでポケモンとのび太とノートは終了です。 たびたびの猿さんには焦りましたが、最後まで投下出来て良かったです。 この作品を書き終えれたのも、単に初心者である自分を助けてくれた皆さんのお陰だと思います。 本当に今までありがとうございました。
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前へ ここは35番道路の右側にある草むら。 元々裏道のここは人通りが少なく、時間帯が夜であることも人寂しさに拍車をかけている。 のび太「……ここまで来れば誰も見てねえよな。」 暗闇の中のび太は辺りを見回す。 手には何か大きな袋を持っている。 傍らにはドラえもんもいた。 用心深く辺りに人がいない事を確認したのび太は、指をパチンと鳴らす。 すると、ドラえもんの体が突如、ウニョウニョと変形し始め、不定形の姿になった。 のび太「ふぅ、念の為にあの女からメタモンを盗んでて良かったぜ……。 バッジのお陰で言うことも聞くしな。」 のび太はそう呟くと袋を開け、中身を辺りにバラ蒔いた。 中からは青メッキのかかった謎の鉄クズが溢れる様に出てくる。 余りにも無機質なその様を見てのび太はニヤリとする。 のび太「これで俺の邪魔者は消えた……。 スネオやジャイアンは偽の青狸に騙されてる。 明日までは時間が稼げるだろう……。」 闇の中、のび太の呟きのみが響く。 ―あの時― すなわち、のび太とドラえもんが一騎打ちになった時のこと。 互いの勝負は一瞬でケリがついた。 のび太に飛びかかったドラえもん。 しかし彼がのび太に攻撃を加える前に、ゲンガーの放ったシャドーボールはドラえもんの頭部を吹っ飛ばしたのだ。 そして、のび太はそこらじゅうに散らばったドラえもんの残骸を一欠片も残さず集め、その部屋を後にした。 のび太は袋の中身を全てバラ撒き、土を軽く被せる。 発見を困難にする為だ。 一連の作業を終えたのび太は一息つくと近くの岩に座り込む。 のび太『少々あっけなかったがこれで、一番マークすべき人物であった青狸は片付いた。しかし余りにもあっけなさすぎたな……。』 そこでのび太はある一つの可能性を懸念した。 倒したドラえもんの正体が「偽物」の可能性があることである。 確かにその可能性は高い。 普通、得体の知れない殺人の能力を持つものに対して高いリスクを払い直接接触を求めてくるだろうか。いや、普通は来ないだろう。 それに「偽物」を使えば自分は安全な所に避難しておける上に、「偽物」が殺られたとしてもこちらを油断させる事が出来る利点がある。 まさに今の自分の様に。 ノートが効かなかった事から考えてものび太が殺った「アレ」は「偽物」である可能性が高い。 だとすると、奴はその間安全な場所で此方の様子を見ていたのだろう。だとしたら今だ青狸の「本体」は何処かにいることになる。 そこまで考えてのび太は呟いた。 のび太「だとしたら運が悪かったな。奴は。」 のび太は不敵に笑う。 もし、殺ったのが「偽物」だとしても奴の名前、及び手持ちは既にノートに書いてある。何処かで勝手に息絶えているのが関の山。 だが、ノートで殺った青狸の「本体」の残骸が見つけられた場合、先程まで一緒にいた自分が疑われるのは明白だろう。 しかしそれは余り心配しなくてもいい。 スネオやジャイアンは奴の残骸を見つける事は絶対に出来ないだろう。 青狸は奴らの助力を受けている様子は全く無かった。則ち、今回の事は完璧に奴の単独行動。理由は恐らく全滅を防ぐため。 まあ、俺の能力が謎だった訳だから、それは賢明な判断だろう。 青狸の単独行動故に「隠れ場所」を二人が知っている可能性は極めて低い。 多分、場所も自分達では発見が困難な場所だろう。 奴らに見つけられるということは、逆を返せば自分にも見つけられる所であるということだからだ。 故にもう青狸の心配はしなくていい。 今、大切なのは明日の策だ。 のび太は再び思考を巡らせる。 ―そして10分後― のび太「よし、これでいくか……。」 のび太は一通り考えがまとまると、岩の上から立ち上がった。 そしてポケットを探りアカネから貰ったディスクを取り出す。 のび太「今日は徹夜の作業だな……。 まあ、全ての仕上げと考えるか!キシシシシ。」 のび太はそう呟き、夜の闇に消えた。 冷たい夜風は容赦なく青い鉄クズを吹き付けていた。 「チッ、チッ、チッ、チッ。」 すがすがしい小鳥の鳴き声。 明けない夜は無い。 昇らぬ朝日は無い。 時間システムのある、ポケモン金銀ではちゃんと朝も用意されている。 しかし、今は9時30分なのでその朝もゲームのシステム上、あと少しで終わってしまうが。 のび太「………眠いな……。」 といった呟きが聞こえるや否や、テントの中から一人の少年が現れる。 睡眠不足の為、目の下には隈が浮かんでいたが、その顔は腫れ物が落ちたかのような清々しさに満ちていた。 のび太は辺りを見回す。 既に人々はいそいそと今日も働いている。 自分も最後の仕事をせねばならない。 「設定」した時間までまだあと少し時間がある。 この計画は一人より二人、二人より三人の方が楽しいだろう。 ジャイアンやスネオも呼んでやらねば。 最大級の恐怖を与えてやる為に。 のび太は行動を開始した。 その顔は朝日には似合わぬ邪悪さが感じられた。 自然公園。 ここには、今回の事件で捕えられたロケット団員達が拘束され、集められていた。 一般のトレーナーなどは見当たらない。 拘束されているとはいえ、ロケット団はロケット団。 やはり恐れが残るのだろう。 そのせいで、緑で一杯であるハズのそこは何故か黒一色。 とても異様な光景だ。 しかし、その黒一色は突如崩される事になる。 その自然公園内に緑とオレンジのシャツを着た二人組が入って来たからだ。名をスネ夫、ジャイアンといった。 スネ夫「ジャイアン、のび太は?」 ジャイアン「見当たらねえな。」 二人はキョロキョロと辺りを見回す。 しかし、辺りは黒い連中のみ。 のび太の姿は見当たらない。 どうやら二人はのび太に呼び出されたらしい。 ジャイアン「アイツ自分から呼び出しといて何をしてるんだ?」 スネ夫「多分、まだここについて無いんだよ。のび太の癖に生意気だな。」 二人は口々にのび太の悪口を言う。 まあ、呼び出された二人にとってはのび太が居ないとどうしようも無いので、各々好きな事をして待つ事にした。 スネ夫は持って来たいかりまんじゅうを右手にそこらを散策、ジャイアンは手持ちを鍛える為に草むらへと入っていった。 スネ夫「ほむほむほむ。それにしても………。」 一通り散策を終えたスネ夫はいかりまんじゅう片手に目の前の景色に感嘆の声を上げる。 スネ夫が見ているのは、一面に広がる黒装束の集団。 これだけの人数に多少の脅威は感じるが、全員が拘束され、身動きが取れないので恐怖には値しない。 連中に興味が沸いてきたスネ夫は彼らに近づき、ジロジロ視線を投げ掛ける。 すると、団員の一人と目があった。 団員はこちらをガン見している。 スネ夫「なっ、なんだよ、お前!」 生来のビビリであるスネ夫は少しオドオドしたが、じきにその団員の視線がスネ夫の右手に有るものに向けられている事に気づいた。団員の口からはヨダレが垂れている。 スネ夫「腹が減ってるの?」 スネ夫が訊く。団員は狂った様に頭を上下させた。 スネ夫「そうか……。仕方ないなぁ。」 スネ夫は団員の顔の前にまんじゅうを差し出す。 団員「まごぉぉおぉッ!」 団員はそれに食い付いた。 スネ夫「残念~。あげな~い。」 スネ夫はさっとまんじゅうを引き、団員の目の前で自分の口の中に入れた。 スネ夫「ホントに貰えると思ったの?プフフ!」 スネ夫は高笑いする。 すると、横から他の団員が言った。 「最低……。」 スネ夫は、キッ、とそちらを睨む。 そこには、以前見た顔があった。 コガネデパートで激戦を繰り広げた、ロケット団幹部の紅一点、キキョウである。 キキョウ「ホントにアナタ最低。 そんな、弱者をもて遊ぶ様な行為……。 負けた自分が馬鹿みたいで恥ずかしいわ。」 キキョウが吐き出す様に言った。 その目は赤い。 キキョウ「アナタ達は知らない。 私達が今まで受けてきた仕打ち、辱め、虐待……。 この世の中はいつもそう。 ただ、人より少し境遇が違う、貧富の差が違う、それだけでこんな屈辱を受けなければならない……。 分かる?分からないでしょう?」 スネ夫は何も言えない。 キキョウは続ける。 キキョウ「私達にはロケット団しか無かった。 私達の苦しみを分かってくれるのはトシミツ様しか居なかった。 この苦しみを分からない世間に伝えたかった。 ただ知らなくて私達を嘲る人々に分かって欲しかった。」 キキョウの目から涙が溢れる。 キキョウ「だから私達はラジオ塔をのっとった。これが本当の理由。 世間に私達の想いを伝える為に……。」 キキョウの言葉が言葉にならなくなった瞬間だった。 彼女の横で誰かが言った。 「間違ってる!」 キキョウは驚きの顔でその団員を見る。 その団員は続けた。 団員「僕はそれは間違ってると思います。 『誰かに何かを伝える』、これは大切な事だし、素晴らしい事だと思う。 でも、でも他人を傷つけたり、迷惑をかけてそれを伝えたとしても、その気持ちは誰にも伝わらない。心は誰とも繋がらない。 声は誰にも響かない。 傷からは……何も生まれない!」 団員の言葉にスネ夫心から、何かむずがゆいものが込みあげてきた。 彼らの境遇がどうだったのかは知らないが、確かに今まで自分は目の前の人々がゲームの中の人物と思い、軽く扱ってきた。 しかし、彼らも考えて自分の時間を生きている。 それは既に現実の人間と変わらないのでは無いか。 スネ夫はそう考えるとさっきの自分の行為が許せなくなってきた。 とりあえず、ここは謝ろう。悪かったのは自分だし。 スネ夫「僕も……僕も悪かっ……」 そこでスネ夫の言葉は中断された。 後ろからやってきた人物の声がスネ夫の言葉を遮ったからだ。 ソイツは言った。 のび太「キシシシシシシ。 ゲームのキャラ如きが最もらしいことを言ってるや。笑えるなあ。」 スネ夫は突然後ろから響いた声に驚き、振り向いた。 そこにはメガネを書けた冴えない少年、すなわちのび太がニヤニヤしながらこっちを向いていた。 スネ夫「の、のび太……?」 スネ夫は力ない声を上げる。 それは突然ののび太の出現、それと彼のとは思えない発言による驚きによるものだった。 今だのび太の発言が信じられないスネ夫。 しかし、それにのび太は止めを刺した。 のび太「伝えるため?気持ち?声? ふん。バカバカしいや。 カスが何を言おうと無駄無駄。 所詮お前らは作られた存在。ただのプログラム。 電導体の集まりが偉そうな口をきいてんじゃねえ。 っていうか、それに同情するキツネ、お前も本当にバカだろ。マジで笑えるな。」 のび太はそう言い、キシシシシシシと下品な笑い声をあげる。 スネ夫「のび太、お前本気で言ってるのか?」 普段は人道を外れた行為をとるスネ夫も、流石にこれには怒りを隠せない。 スネ夫はのび太の胸ぐらを掴んだ。 釣り目で下からのび太を睨み上げるスネ夫。 スネ夫「所詮プログラムだって? 見損なったよ、のび太。」 スネ夫はそう言い、手を放す。 のび太はダルそうにその襟首を直しながら言った。 のび太「見損なう事は無いよ。だって………」 その時だった。 ドサッ。 何かが倒れた。そんな音がした。 スネ夫は本能的にその方を向いた。 すると、そこには黒ずくめの一人の女性が目を見開き体を震わせていた。 キキョウ「ううううう……く、苦し……」 スネ夫「キキョウさん!」 スネ夫はのび太そっちのけでキキョウの方に駆け寄る。 まだ幼さの残る顔は、チアノーゼで変色し、既に息は無かった。 また、目の前で人が死んだ。 スネ夫はそのショックでまた体が震えた。 自分の死より、他人の死の方が怖かった。 だが、スネ夫はその死の感慨にふける暇は全く無かった。 キキョウがいる地点から少し離れた場所から、またもや人の倒れる音がしたのだ。 のび太「どうやら時間のようだな。キシシシシシシ。」 のび太が言ったが、スネ夫は全く聞こえていなかった。 ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ。 右の人、左の人、全ての人が苦しみながら順番に体を横たえてゆく。 のび太「キシシシシシシ。スゲエ、やっぱ時間を少しずつずらして良かった!まるでドミノやウェーブみたいだ!面白れえ!」 のび太はケラケラと笑い声をあげる。 今度はスネ夫はちゃんとのび太の言葉を聞き取れた。 のび太の言葉、状況、どれを取ってももはや疑い無い。 スネ夫「まさか、のび太……お前……。」 スネ夫の震える声を聞き、のび太はいっそう大きな笑いを上げた。 顔は笑いで歪んだ。 のび太「キシシシシシシ! そうさ!俺が時間犯罪者だ!」 のび太は高らかに宣言した。 次へ
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前へ のび太「なんだ、なんだ、なんだ!?」 ドラえもんが驚いていると、ドアからのび太が飛び出してきた。 外ではサイレンが鳴っている。 センターの人達も様子を見に行ったようだ。 ドラえもん「突然、外で爆発音がしたんだ。 まさか…………」 のび太「時間犯罪者!?」 のび太が叫ぶ。 ドラえもん「いや、まだ分からない! とにかく、もしそうだとしたら、奴はエンジュに居る僕らを 直接狙っているということになる」 ドラえもんが言った瞬間、 「ドカァァァァァァン!!!」 また、爆発音が聞こえた。 のび太「ドラえもん!! 行ってみよう!」 のび太が急かすが、ドラえもんは少し間をとる。 このまま、いぶり出されるように行くのは、正直危険。 だが、行けば時間犯罪者の姿を確認できる可能性が高い。 虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。 ドラえもん「よし!行こう!!」 のび太「うん!!」 ドラえもんとのび太は部屋を飛び出した。 一方、エンジュの焼けた塔前でのこと。 この街のジムリーダー、マツバは重要文化財である焼けた塔を 爆破している男を止めるべく、現場に駆け付けていた。 現場には町中の住人が野次馬となって来ていた。 マツバ「何だって言うんだ? 一体?」 マツバに聞かれたジムのトレーナーは無言で指を指す。 「うぐ、うぐぐぐぐ、爆!漠!縛!幕!博!莫!」 その方向には、まさに常人の精神を持っているとは言いがたい人物がいた。 マツバ「狂ってるとしか言いようがないな…… しかし相手は奴一人だ。 何故とり押さえない?」 マツバが聞いた瞬間、 狂人「しねラァァァ!! だいばくはつ!!!」 二体のイシツブテが飛んでくる。 マツバ「伏せろ!!!」 「ズワアアアアアン!!!!」 凄まじい爆音が響き渡る。 狂人「もどりぇ、イシツブテ」 変質者はイシツブテを手元に戻し、元気の欠片を使う。 マツバ「くそっ………! 危険すぎる!!! しかもこれなら、何度でも爆発が可能ってことか!」 マツバが言うか早いか、変質者は第二撃を開始した。 狂人「氏ねねねね。」 マツバ達の方にイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! 止めろ!」 マツバはゲンガーを繰り出したが、間に合わない。 イシツブテから光が発され始めた。 「ピジョン!でんこうせっか!!」 その時、どこからともなく、ピジョンが飛んできて、イシツブテを弾き飛ばした。 遠くで爆発音が聞こえる。 マツバ「誰だい…………?」 マツバが後ろを向くと、見覚えのない冴えないメガネと、 見覚えのある青い狸が居た。 のび太「大丈夫でしたか?」 のび太が聞く。 マツバ「ああ、誰だか知らないが、ありがとう。 もう一人、君はドライモン?だっけかな?」 マツバに名を間違えられたドラえもんはすぐさま、それを正す。 ドラえもん「ドラえもんです。 ところで、マツバさん。 なんなんですか? あの爆発は?」 マツバは黙って指を指す。 そこには何処かで見たような顔があった。 ドラえもん「あ、あなたは!?」 のび太「船乗りのヨシト!?」 そう、のび太達の目の前には、アサギの灯台でのび太と戦ったヨシトがいたのだ。 しかし、あの時の面影は全くない。 のび太「ヨシトさん……… なんで……?」 のび太が歩み寄ろうとする。 しかし、ヨシトはまだ笑っている。 マツバ「伏せろぉ!!!」 マツバはのび太にのしかかった。 ヨシトの投げたイシツブテが爆発する。 のび太「マツバさん、ありがとう………」 のび太がそう言うと、マツバが訊いてきた。 マツバ「知り合いか?」 のび太は少し躊躇った様子で答えた。 のび太「前にバトルをして……… まさか………こんな……」 知り合いだというのび太の様子を察したのか、マツバが言う。 マツバ「わかった。 それなら、少々危険だが、無傷でとり押さえる。」 のび太「どうやって!?」 のび太の問いにマツバが答える。 マツバ「奴はだいばくはつを使わせた後、ポケモンを戻して、 元気の欠片を使うという、三つの動作を行う。 そこで、敢えてだいばくはつを使わせ、 三つの動作をしているスキを狙って取り抑える。」 マツバの言葉に、のび太は少し間を開けて言う。 のび太「……囮作戦ですか?」 マツバは頷く。 マツバ「だいばくはつを使わせる囮役は僕がやる。 君は彼を取り抑えてくれ。」 マツバの言葉にのび太はこくりと頷いた。 マツバ「よし、いくぞ! 作戦開始!!」 ヨシト「氏ね市ね史ね施ねえええ」 「グワーーン!!」 ドラえもん「くそっ! ヌオー!」 マツバとのび太が作戦を立てている間、ヨシトからの攻撃は ドラえもんが足止めをしていた。 しかし、だいばくはつを連発する相手に、流石のドラえもんも押され気味である。 すると、 マツバ「おい!貴様! 何でこんなことをする!!」 ヨシトの注意を引くため、マツバが叫んだ。 しかし、ヨシトは訳の分からない言葉をしゃべって話にならない。 ヨシト「えへえへえへえへ」 マツバは恐怖を感じたが、作戦の為に囮としての役目を果たさねばならない。 マツバ「こい!この低脳の基地外野郎!!」 ヨシト「ん~~? 施ね史ね市ね氏ね市ね氏ね イシツブテェ! だ・い・ば・く・は・つ」 マツバの方へイシツブテが飛んでくる。 マツバ「ゲンガー!! さいみんじゅつで止めろ!!」 ゲンガーのさいみんじゅつでイシツブテのだいばくはつが中断される。 そして、当然の如くヨシトはイシツブテを戻し、なんでもなおしを使おうとする。 マツバ『今だ!!! メガネ少年!!』 ヨシトから見えない影からピジョン、フーディン、ブーバーを従え のび太が飛び出す。 しかし、なんということか。 のび太は少し飛び出すのが遅れてしまった。 ヨシト「うわああああああああくるなああああああ」 のび太に気付いたヨシトは、のび太に向けてイシツブテの入った ボールを投げつける。 ドラえもん「のび太君!!!」 イシツブテがボールから飛び出し、光だす。 ドラえもんが叫ぶ。 のび太「うわああああああああ!!!」 「ドガーーン!!!」 辺りを揺るがす激しい爆発が起こり、それがのび太を包む。 ドラえもん「のび……太……君…?」 周囲は砂塵に支配され、静寂が響く。 ドラえもんはのび太の無事を願った。 しかし、そこは何もかもが跡形もなく吹っ飛んでいた。 ドラえもん「のび太君が……跡形もなく……」 ドラえもんは呆然とし、思考は中断した。 しかし、また、ある声で動き出す。 ヨシト「ひっ、ひっ、人が……吹っ飛んだ……跡形もなく…… 俺が……やった?」 ヨシトも呆然としているが、やがて、 ヨシト「うがああああああああ!!! 人をおおお人をおおお!!!」 ヨシトは完全に発狂し、自らの周りにイシツブテを二体、 クヌギダマを一体繰り出した。 それらはやがて、光をおびはじめる。 マツバ「まさか……………。 ヤバい!! 皆!!伏せろぉぉぉ!!」 マツバが叫んだ瞬間、ヨシトの周りで凄まじい爆音が轟いた。 その頃―ワカバタウンで、不審な男女二人組がいた。 別に、この時間帯でうろつくのは、田舎町のワカバタウンでも おかしいことでもないし、その二人が挙動不審なことをしていた訳でもない。 ただ、その服装は、未来の服を思わせ、胸には大きな赤い拳のマークがある。 そのうちの一人、男の方が言う。 男「…………此所に、辿りつけたのは、俺達だけか………。 他の奴らは…………。いや、考えるまい。」 男はしみじみと周りを見回す。 一体、この世界はどんな世界なのだろう。 女「町の外を見てきたわ。 見たこともない生物がいる。 やはり、ここは異次元空間ね。 何故、この時代にあるのかはわからないけど。」 女は言った。 こちらの心を見透かすように。 男「なんにせよ、任務の為、この世界の情報は必要だ。 それに、ここは恐らく誰かに創られた次元。武器や、通信機器、 特定の道具が全て消えてしまった。 それに、お前の能力は情報収集に向いているからな。」 男の言葉に女が頷く。 すると、女は何処かへ行ってしまった。 男「この仕事に失敗は許されない…… 何故なら、この為に俺達は生まれてきたようなものだからな……」 そう呟くと、男は犠牲になった友人達に祈りを捧げた。 マツバ「うえっ……、酷いな……」 ヨシトの体の惨状は凄まじいものだった。 それを書くのは気が引けるので、ここでは省略させてもらうが。 そして、ドラえもんはショックの余り、立ち尽くしていた。 この世界の死、則ち現実の死ではないことは分かっているが、流石に気がめいる。 それより、ジャイアンとスネ夫に、作戦前にこの事を伝えなければならないのは 考えただけでも辛かった。 マツバもそれを察したようで、 マツバ「………君は、もう帰ってもいいよ。 話は明日聞くから……」 と、言ってくれた。 ドラえもん「わかりました………」 ドラえもんは重い足を、ポケモンセンターに向かわせた。 ああ、なんで、頼まれたからといって、皆をこの世界に連れて来たんだろう。 僕のバカバカバカバカバカ。 ドラえもんが失意に陥っているとき、目の前から人影が現れた。 その人影は近付くにつれ、鮮明になる。 そして、それは自分が最も安否を気遣う人物だと解った。 ドラえもん「のっ、のび太君………?」 のび太「ドラえも~ん!!」 ドラえもんはのび太に抱きつく。 ドラえもんの目からは、涙が出てきた。 ドラえもん「のび太君! なんで無事だったの?」 ドラえもんは泣きながら聞いた。 のび太「話せば短いんだけど、実はビリリダマが爆発したとき、 フーディンのテレポートで逃げたんだ。 それで、ここまで来るのに時間がかかっちゃった。」 ドラえもん「あっ………」 成程。 確かにのび太が爆発で死んだのなら、跡形もなくなるのはおかしかった。 のび太より明らかに強い爆発で死んでいたヨシトは、まあ、あれではあったが 体はちゃんと残っていた。 少し考えれば分かることだが、自分としたことが、動揺して考えつかなかった。 ドラえもん「まあ、良かったよ。 とりあえず、ポケモンセンターまで帰ろう。」 ドラえもんは、そう言うと歩きだした。 無事だったのはいいが、のび太がまだ警戒する存在であることに変わりはない。 この世界では自分達、プレイヤーが干渉しない限り、人が死ぬことはない。 それ故、ヨシトの死も、ゲーム内の誰かの干渉によるものだろう。 それの元凶は恐らく99%、時間犯罪者。 だとしたら、常に自分が監視していたのび太が黒である可能性は低い。 しかし、しずかの時といい、奴は遠隔で人を殺せる。 それがある限り、警戒を緩めるべきではないが、 ヨシトの死は見る限り、どうひいきめに見ても自殺。 故に殺されたとは考えにくい。 だとしたら、のび太ではない人物が直接ヨシトに催眠術などの、なんらかの操作を施した可能性が高い。 しかも、もしのび太が時間犯罪者としたら、わざわざ、自分の前に現れるだろうか? 死体がないことから、のび太=時間犯罪者だとバレても、フスベで待ち伏せ作戦を採った方が得策ではないのか? ここで、自分が殺されるということも考えられるが、手持ちのレベルや、相性からいって恐らく無理。 それに、もし能力で殺すのなら、やっぱりわざわざ自分の前に現れる必要がない。 やはり、のび太はシロなのか? 考えれば考える程、深いループにはまっていく。 ドラえもんが、その様な思索に耽っている内に、 二人は再びポケモンセンターに着いていた。 ドラえもんとのび太はフロントで部屋の鍵を受取り、各々の部屋へ向かう。 そして、二人がそれぞれ、部屋に入ろうとしたとき、ドラえもんが言った。 ドラえもん「のび太君、ヨシトさんの事は明日話すよ。 今日は、色々あったから、明日の為にゆっくり寝た方がいい。」 のび太「うん、そうする。おやすみ。」 ドラえもん「おやすみ。」 二人は、そう言い合うと部屋へ入った。 ドラえもんは部屋に入った瞬間、またポケットから蚊メラを取り出す。 やはり、疑いは若干晴れたとはいえ、完全にシロとは言えないし、 もし、この状況でのび太が時間犯罪者なら、自分が殺される。 多分ないと思うが、あのタイミングからいってヨシトの凶行は のび太の挿し金の可能性もある。 自分の身を守る為にも、ここで妥協するわけにはいかない。 ドラえもんの盗聴は朝まで続いた。 のび太は部屋に入るとすぐにベッドの上で横になった。 こみあげる笑いをこらえながら。 のび太の策は、ドラえもんがチェックインの時に書いていた名前を見る (書いていた時に名前を見れなかったのはのび太最大のチョンボだったが)という 単純な策であった。 しかし、それには問題があった。 あの忌々しい青狸の盗聴である。 部屋から出るのは、単独行動になり、青狸のお付きがつくので不可。 それに、わざわざ名簿を見せてくれと言うのはあからさまに妙だろう。 それ故、フロントの名前を見るには、センターの職員及び、 糞狸達をセンターから引き離すことが必要だった。 そこで今回、ノートの隠された力を使わせてもらった。 このルールは、メガネにも話していないが、実はこのノート、 対象者の死の前の状況、死因、命日をある程度操作することが出来る。 ノートに記入したのは以下の通り。 名前【ヨシト】 死因【爆死】 手持ち【ニョロゾ・メノクラゲ・ドククラゲ】 死の前の状況【ショップで出来るだけ多くの元気の欠片を買い、 アサギから自転車でスリバチ山へ向かい、 時間に間に合うようできるだけ、じばくの使えるポケモンを捕獲。 その後、発狂しながら、エンジュの重要文化財を襲撃。 襲撃中、人を殺したと思い込み、200×年×月×日午後7時30分自殺】 まず人の目につき、この町のシンボルである文化財を破壊することにより、 ポケモンセンターの職員を引き離す。 青狸も当然現場に向かう。 その時点でポケモンセンターはもぬけのカラ。 何故、人を殺したと勘違いするという条件をつけたのかは、 自然な形でテレポートを使い、ポケモンセンターに戻るため。 戻れば無人のポケモンセンターで優々と名簿を見ればよい。 しかし、これも、実行するにはネックがあった。 それは、青狸の監視の可能性。 もし、監視されていた場合、これを実行すれば殺害方法もバレ、 確実にアウトだろう。 しかし、盗聴のみならノートを使い、これを実行することは極めて容易。 だから、青狸が監視をしているか、していないかを確かめる為に このポケモンを使った。 それはラッタ。 この一週間、一緒にいたお陰で、俺は奴がなぜか、ネズミのたぐいが嫌いで、 見たら発狂しだすことを知っている。 だから、敢えて部屋の中でラッタを繰り出し、 視覚のみの情報を送り続けることにより、奴の反応を確認。 全てのポケモンを繰り出したのは、ラッタだけ出すと余りにも不自然で後々、 疑われる可能性があるから。 そして、奴の反応から少なくとも監視はしていないと判断し、この計画を実行した。 しかし、奴は計画の為には今は殺せない。 いや、殺すと策の成功率が低くなると言った方が正しいか。 とりあえず、明日はあの女に腕をみせつける日だ。 もう、起き続けてる理由もないし。 寝よう。 のび太は修行の疲れを癒すべく、床についた。 次へ
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パリス。 2年秋に途中入部したが、かなりのスピードで馴染んでいった。 バイトは和菓子屋、お笑いが大好き。 野球は中日を応援しているが、きっかけはダイノジのラジオ番組だった。 現在はヤクルト・青木宣親に夢中。
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前へ ドラえもんはそう言い、部屋の中に入ってきてパチンと灯りのスイッチを入れた。 部屋が一気に明るくなり、人型、ダルマ型の二つの影のシルエットが出来る。 人型の影の口が動く。 のび太「いや、僕も今来たばかりだよ。 っていうかなんだい? 僕を突然呼び出して。」 のび太は言った。 ドラえもん「まあまあ。 二人っきりで話したい事もあるもんだよ。 まあなんだい。これでも食べて機嫌直してよ。 チョウジ特産のいかりまんじゅう。美味しいよ。」 ドラえもんはのび太をなだめながら、自分の手の様に丸いまんじゅうを差し出す。 のび太は怪訝そうな顔をしていたが、やがてそれを手に取り、口に入れた。 ドラえもんは満足そうな笑顔を浮かべ、話を切り出す。 ドラえもん「のび太君。 君の望み通りロケット団の連中の被害は最小限に抑えたよ。 負傷者はたくさんいるけど死者はコウただ一人だ。」 のび太は口をもぐつかせながら話を聞く。 のび太「それは良かった。 敵も味方も傷つく人は少ない方がいいもんね。 まあ、コウっていう人は残念だったけど……」 のび太はまんじゅうを呑み込み言う。 その時、ドラえもんの目がキラリと光った。 ドラえもん「そう! 話はコウについての事なんだけど……。 くだらないと思うけど少しで良いから聞いてくれないかい?」 ドラえもんが言う。 話し方は穏やかだが、何か、威圧感というか、「聞かなければただじゃおかない」。そんな空気をかもしだしていた。 それを感じてか、感じずか、のび太は椅子に深く腰をかけ、話を続けてのジェスチャーをする。 ドラえもんはそれを確認し、礼を言って話し始めた。 ドラえもん「まず、僕が不自然と思った点の一つ、コウの死に方から話していこう。 以前にも話したと思うけどこの世界の人間は、外部からの人間、すなわち僕らから直接的でも間接的でも、何らかのフラグを立てられなければ、「勝手に」死亡したり居なくなったりするのは有り得ないんだ。 簡単に言うと、 1・僕らが死ぬ様に仕向ける。 2・僕らが直接殺害する。 以上の二点以外の理由で、キャラが死ぬのは有り得ないという事だよ。 そしてコウは殺されたのではなく、自らの不注意からの死亡。 それは1の「何者かがコウが死ぬ様に仕向けた。」ということを示唆しているのは分かるね?」 ドラえもんに訊かれ、のび太は頷く。 ドラえもんは続けた。 ドラえもん「そして、その死亡フラグを満たせるのはゲーム外の人間だけだから、コウが死んだフラグを立てたのは僕らの誰かか、もしくは時間犯罪者ということになる。 そしてそのフラグを立てたのは十中八九時間犯罪者だろう。 以上の事からある事実が浮かび上がる! 時間犯罪者はあの日、コガネ内でコウに遭遇しているということだ!」 ドラえもんの声が静が支配するこの部屋に響く。 のび太が何事か口を開こうとした。 声が裏返りそうで出る気がしない。 のび太は爪を噛む。 暗がりでよく見えないが、鬼人の様な目付きで相対している。 のび太の反応を待たず、ドラえもんは続ける。 ドラえもん「だが、ここでまたある疑問点が浮上する。 それは「果たしてあの完璧な包囲網とロケット団の見張りをかいくぐり、コガネ内に侵入できるか?」ということ。 答えはほぼ不可能。 皆コガネに内に戻った奴は居ないと言っている。 故にコガネには幹部と僕らしか居なかった事になる。 僕はラジオ塔前に居たしからコウに接触するのは不可能。 ジャイアンもスネ夫も幹部と闘っていたから不可能。 すると、コガネ内にいた人物でアリバイが無く、コウと接触出来るのは……」 ドラえもんはのび太を睨んだ。 ドラえもん「君しか居ないんだよ………のび太君。」 のび太「何!?ドラえもんは僕が時間犯罪者って言いたいの!?」 のび太は膨れっ面をして言う。 まだ………まだ誤魔化せる。決定的な証拠は無い。 のび太は爪を噛み続ける。うっすら血が滲んでいた。 ドラえもん「いや、君が時間犯罪者と言ってる訳じゃない。 ただアリバイが無いからあの日何をしていたのか聞きたいんだ。」 ドラえもんが言ってくる。 のび太「………場所何て分からないよ。迷ってたんだから……。」 のび太は小さく答えた。 ドラえもんが畳み掛けてくる。 ドラえもん「誰とも会わなかった?戦わなかった?」 のび太「会ってないよ。戦ってないよ。」 ドラえもん「ふーん。 誰とも会わなかったの。おかしいなあ。 じゃあさ、君の首の後ろにある傷。 それはどうやって出来たの? 何処かにぶつけた様な傷じゃない。 何か鋭利な刃物で切り裂かれたみたいだね。」 のび太「なっ………!」 やられた。 のび太はそう思った。 ドラえもんはのび太に歩み寄る。 ドラえもん「その傷は侵入前には無かった。 君、絶対中で誰かと戦ってるよね? 嘘をついた理由。今度はそれを聞かせて貰うよ。 まあ、理由は分かりきっているけどね。 君は僕の策にハマったんだよ。」 言い逃れ出来ない。 のび太はそんな状況に陥った。 のび太はポケットに手を突っ込み暫し黙っていた。 そして小さくポツリと言った。 のび太「………だから。」 ドラえもん「は?聞こえない」 最初、ドラえもんは聞き取る事が出来無かった。 しかし、のび太の中でプツンと何かがふっ切れ突然狂った様に笑いだした。 そして今度ははっきり聞こえる様に言った。 のび太「俺が……俺が時間犯罪者だからだよ。 ドラえもん。」 俺は時間犯罪者だ。 のび太の冷たい声、それに伴う薄気味悪い笑いが室内に響く。 目付き、顔付き、かもしだすオーラ。全てがのび太少年のそれとは違う。 間違い無い。正真正銘、コイツは時間犯罪者だ。 今まで求めていた敵。それに辿り着いたドラえもん。 丸い額にはうっすら汗の様な物が見える。 身構えるドラえもんに、のび太が言った。 のび太「ドラえもんよ……。 まあ、そう身構えなさんな。とりあえず、一つ話をさせろよ。」 ドラえもん「……話はこのままで聞く!」 のび太が言うが、ドラえもんは臨戦体制を崩さない。 手にはボールが握られている。 今にも攻撃を開始しそうな勢いだったが、ドラえもんがそれを実行することは無かった。 のび太の口から思いもよらない衝撃的な言葉が飛び出したからだ。 のび太「おお、恐えなあ。 まあ、俺の話を聞いてくれ。 お前の言う「遠隔で人を殺す方法」を教えてやるよ。」 ドラえもん「なにッ?」 思わずドラえもんも足が止まる。 のび太はキシシシシシと笑った。 自分の会話のペースに相手をひきずきこめれば完璧に有利になれる。 それをのび太は熟知していた。 のび太『もう殺すのは確定だから別に見せても構わないだろう。』 のび太は机からノートを取り、ドラえもんに見せる。 のび太は言った。 のび太「全てのタネはこのノート。 信じられねえだろうが、このノートに人の名前と手持ちポケモンを書けばソイツは死ぬ。 死因、死亡時間も書けばその通りになる。 便利だろ?」 ドラえもんのドングリ眼が見開かれる。 にわかには信じ難かった。 そんなものは22世紀にも存在しない。 だが、それは高確率で本当の事だろう。 そう考えれば、しずか、コウ、ミカン、ヨシト等の死亡が全て納得のいくものに変わる。 そして自分達が生きているのも。 ドラえもんはのび太の言葉の衝撃に驚きを隠せなかった。 しかし、その驚きは次第に怒りに変わる。 コイツはゲームとはいえ、その殺人ノートでしずかちゃんを殺した。 スネ夫、ジャイアンにも恐怖を与えた。 目の前にいるのび太はやはり消されてすり変わっているのだろう。 と、言うことはコイツはのび太の命も奪った事になる。 ドラえもん「絶対に許せない!」 ドラえもんは怒りを爆発させた。 そしてその怒りにより青い顔はトマトの様に赤くなる。 ドラえもん「許せなーい!!絶対に許せなーい!」 ドラえもんはボールに手をかける。顔は鬼の様な形相。 しかし、それに臆する事なくのび太は言った。 のび太「キシシシシシ。今更もう手遅れだよ。 お前の名前は……」 のび太は自らのポケットをまさぐる。 そして一枚の紙を取り出した。 のび太「既にこれに書いてあんだよ!キシシシシシ……。」 のび太が取り出した紙。 それは先程書いていた名前の未完成なノートの切れはし。 しかし、今のそれは血の濁点が振られ完全な物になっていた。 ドラえもんのは青ざめ、元の色を取り戻した。 ドラえもんは力無く膝をつく。 のび太はゲンガーを繰り出し言った。 のび太「お前に残された時間はあと10秒。おっと、自分はロボットだから効かないなんて甘い考えを抱くなよ。 死、終わりは平等。 これはこの世の全ての物に言える事だ。」 ノートの効果発揮まであと、5秒。 4秒。 3秒。 2秒。 1秒。 0。 のび太「時間だ。死ね。」 ………………………。 のび太「?」 時間は間違い無く40秒経った。 ドラえもんは普通なら死ぬハズ。 しかし何故。何故。 のび太「何故テメエは………何故テメエは死なねえんだあああ!!!!」 のび太の叫びが響く。 信じられ無かった。 確実に書いたのに生きているハズが無い。 でも、目の前の青狸は死ぬどころか、苦しむ様子さえも見られない。 のび太『ヤバイ。ここまでバラしたのに何故死なない!』のび太は焦る。 ドラえもんも訳が分からない。 ドラえもん『奴の驚きっぷり。かなりイレギュラーな事態なんだろう!』 ドラえもんはこれを千載一遇のチャンスと考えた。 ドラえもん「うがあああああ。」 ドラえもんはのび太に飛びかかる。 ドラえもんの球状の手がのび太の顔面に伸びようとしたとき、のび太は我に帰った。 のび太「安物ロボットの癖に俺に触れんじゃねえええッ! シャドーボールだ!」 のび太の本体は、ドラえもんに向けて漆黒の球を放った。 スネ夫「ジャイアン、あれ、どういう事だと思う?」 宴の中、とうとう住民から相手にされなくなったスネ夫はジャイアンに話しかける。 ジャイアン「は?はには?はんのほろら?」 それを聞くジャイアンの口の中には大量の食べ物が詰め込まれている。 これではまとも会話にならないので、スネ夫は先にそれを呑み込むように促す。 口の中のを物を異に収めたジャイアンは下品なゲップを上げ、言った。 ジャイアン「で、何のことだ?」 スネ夫「さっきドラえもんが言ってた事だよ!」 ジャイアン「ああ、のび太が時間犯罪者だとかいうアレか。」 ジャイアンは、興味は無いよとばかりに呟き、食事に戻った。 スネ夫「……………能無しが。」 実は二人は、既にドラえもんから二つの事を言われていた。 一つ目はのび太が時間犯罪者であるかも知れないということ。 二つ目は、今日を境にドラえもんが行方不明になる、若しくはドラえもんが明らかに誰かに襲われて壊れているのを発見した場合、のび太を時間犯罪者として優先的に疑え、というものである。 ジャイアンはそれを笑い飛ばしたが、スネ夫は正直それに何処か思い当たる節があった。 なんというか頭が良くなった、そんな感じである。 だが、その疑念も実際はあって無いような物。 しかし、有り得ない事では無いのでとりあえず注意する必要はあると思い、ジャイアンに相談しようとした訳だ。 しかし、そのジャイアン。 食事に必死でスネ夫の話を聞いてくれない。 今も軽くあしらわれたばかりである。 スネ夫「ジャイアン、ジャイアン?」 話をしたいスネ夫はジャイアンの背中を擦り呼び掛ける。 しかし、食事中のジャイアンは止められない。 ジャイアンはスネ夫に一発裏拳を食らわすと スネ夫「ボッ!」 と言いスネ夫はその場に倒れた。 ジャイアンは依然と栄養補給を続ける。 スネ夫「イテテテテ…………」 スネ夫『このゴリラいつか殺す』 スネ夫は鼻を押さえて立ち上がる。 鼻からは鼻血が出ている。拭かねば。 スネ夫がティッシュを探していると、誰かが手を差しのべてきた。 「鼻血が出てるよ。はい、ティッシュ。」 スネ夫「ん?ああ。」 スネ夫はなんの違和感も無くそれを受取り、鼻に詰め鼻血を止める。 一通り作業が終わったスネ夫は礼を言うために顔を上げた。 スネ夫「ありが……わわっ!」 スネ夫は一風変わった叫びを上げると目の前の人物の名前を言った。 スネ夫「のっ、のび太!!」 スネ夫は思わず後退りし、唾を呑み込む。 噂をすれば影。 そんな諺がぴったりな状況だった。 しかも、こののび太、心なしかいつもののび太と違う気がする。 のび太は後退りするスネ夫を追う様に一歩こっちに踏み出してくる。 のび太に今の話を聞かれたかな? もしも、もしも聞かれていて、もしもドラえもんの考え通りなら……。 ケサレル。 スネ夫「うああああッ!」 恐怖によりスネ夫は後ろに飛び退いた。 その勢いで尻餅をつく。 ジャイアンはまだ気づいていないようだ。 のび太は尚も近寄ってくる。 そしてスネ夫にのび太の手がのびる。 スネ夫『マッ、ママァァーッ!』 スネ夫は目を瞑った。 のび太の声が静かに響いた。 のび太「スネ夫……。ティッシュ返して。」 スネ夫「へ?」 スネ夫はふぬけた声を上げた。 のび太は更に手をつきだす。 のび太「返してよ、ティッシュ。」 スネ夫「ええ、ん、ああ。 ほら。」 予想外(?)の言葉に一瞬動揺したスネ夫。 おぼつかない手付きでティッシュをのび太に返す。 のび太にそれを渡すとき、スネ夫はある者の存在に気づいた。 真ん丸二頭身の体に青色ボディ。 それは間違い無く スネ夫「ドラえもん……。」 だった。 スネ夫を見下ろしのび太は言う。 のび太「スネ夫さ、なんで僕にそんなにヒビってるの? あ、まさか…… 僕の事を時間犯罪者と思ってるの?」 スネ夫はその質問に目が泳いだ。 そんな単刀直入に言うとは。 なんと答えればいいのか流石のスネ夫も分からない。 黙り込むスネ夫の返答を待たず、のび太は言った。 のび太「大丈夫だよ。 さっきドラえもんと話したんだ。誤解はすっかり解いたよ。 ねぇ、ドラえもん。」 ドラえもんはコクリと頷く。 スネ夫は予想だにしない展開にポカーンとしていた。 のび太「あ、それだけ言いに来たから、じゃ、行こう。ドラえもん。」 のび太はドラえもんを連れて去って行った。 スネ夫はただそれを呆然と見つめることしか出来なかった。 スネ夫達のいる場所から少し離れた所で、アカネはいかりまんじゅうをほうばっていた。 そして、彼女の手が19個目のまんじゅうに伸びた時、あることに気付いた。 アカネ「あれ?ウチのボールが一個足りん……」 次へ